就活はどうだ。と聞かれ、うるさいと答えた。

そしたら怒ってしまった。洗面所で化粧する私のところまで、怒鳴り声が聞こえた。
父は温厚だ。私たちの前では。
部屋の中で部下をけなしまくる電話をしていて、あぁこの人は優しくないんだなと悟った。
けれど私たちに暴力を振るわないだけマシなのかもしれない。
しかも私を養ってくれる。父親がいなければ生きてはいけないだろう。

しかし苦手だった。
父親がいる空間が苦手だった。

おそらくこうなってしまったのは母の影響だ。母は父親が大嫌いで、小さい頃から愚痴を聞かされてきた。
母の口から一番聞いた話は、自分の哲学や私の進路の話ではなく、父の愚痴だった。

昔から聞いていたためか、いつの間にか父親を見たくなくなった。本が好きで、養ってくれて、様々な恩を感じているため嫌いではない。しかし愛はない。

いなければいいのに、とさえ思う。その感情は激しいものではなく、ゆっくりと侵食していく。

うまくいってない。と言った。
親が子を心配するのにおかしいことがあるか。という言葉に納得したから。
そしたら優しくなった。最初からそう説明してくれればいいのに、と。その通りだと思う。

正論だ。分かってる。
きっと第三者から見たら私は悪者だ。反抗期のめんどくさい娘。

放っておいてほしい。と言った。
俺の会社を紹介しようか。と返された。

嫌いだ、父のこういうところが。
少し安心する。私は父を嫌う理由がある。

母が父を愛していたら、どんな風な関係だったんだろう。
違った人生を歩んでいたのだろうか。

父とはまともに話したことはない。それはとても不幸なことな気がした。しかし話したくない。目の前にいるだけで、蝿が部屋に飛び回るときのようにイライラしてしまう。

早く家を出たい。

口を開けば愚痴しか言わない母親も
優しさの皮をかぶっている父親も

すべてが息を詰まらせる。


恩はある、けれど愛はない。
彼らが死んだって私は泣かないだろう。
ただ自分はこれからどうやって生きようと思うだけ。

苦笑する。一番身勝手なのは自分じゃないか。悲しくなる。