いわゆる一般紙の政治記者だった私の楽しみは、例えば、新内閣ができたときの「閣僚の横顔」である。一般紙の「横顔」はほめるでもないけなすでもない微温的な人物紹介なのに対して、「赤旗」は、そのあしき行動、失言を書き立てて、すこぶる面白い。田中角栄の番記者だった私が今回、その評伝を出版するにあたって、大いに参考にさせてもらったのは、かつての「赤旗」連載「日本の黒幕 小佐野賢治の巻」である。軍に食い込んだ「若き死の商人」を描き出したのは、赤旗記者ならではの粘着力だろう。「赤旗」には時折、大特ダネを抜かれた。九州電力のやらせメール事件は、原子力ムラの偽善を暴いて見事だった。

 官邸前反原発集会の詳細も「
赤旗」で知る。過酷な労働の実態報道もまた「赤旗」が先駆ける。政治記者として「赤旗」の主張をうのみにするわけではないが、いわば極北のアンテナとして私は敬意を表する。その昔、「日本帝国主義の戦争準備とたたかえ!」と書き、一人の兵士も送るな」と反戦を貫いた紙面は、やはり歴史への尊い貢献といっていい。それから、1面コラム「潮流」も漫画「台所憲法」も私の楽しみです。
【2013年2月1日付しんぶん赤旗に掲載】

※ 早野透さんは、現在桜美林大学の教授です。