制限時間いっぱいになってから、土俵周辺の席にかけこんでくる人を時々見かける。砂かぶりといわれるこれらの席は熱心なファンも多いが、もし土俵の取り組みが始まっていたらどうするの?と余計なことを考えたりもする。しかし、最近はそんな心配は無用だ。時間前に立つ取り組みはほとんどない。

 先日亡くなった大鵬さんは、1回目の仕切りから立ってきた大雪という力士の挑戦を受けて下した。戦前、戦中の大横綱・双葉山も1回目から向かってきた龍王山の奇襲を受け止めている。1970年代の”北玉時代”(横綱北の富士、同玉の海)には両横綱が続けて時間前に立って圧勝している。近いところでは2010年5月場所14日目、琴光喜ー日馬富士の両大関が時間前に立って館内を大いにわかせた(押し出しで琴光喜)。

 相撲は制限時間内に、両者の呼吸が合えばいつでも勝負を開始できる。若手、下位力士は大いに挑戦し、上位の力士はいつでもどこからでも来いと受けて立つ。そうした取り組みが増えれば、相撲の魅力がより広がっていくのではないか。(金子義夫)

【2013年1月23日付しんぶん赤旗に掲載】