私が、安倍首相の唱える集団自衛権の行使や憲法改正に反対するのは、政治的な信条やイデオロギーからではありません。「本能的な生き残り感覚」」とでも言うべきでしょう。いま日本がアメリカといっしょにどこかの紛争に武力で参戦した場合、「アメリカの手先」として、小さな島国である日本は真っ先に狙われます。

 自衛隊を「国防軍」にして軍事力を高めようとしたら、アメリカからドカドカと武器を売りつけられるのは目に見えています。そんな道は避けて、日本は「自立力」を高めなければいけません。自立力とは、素晴らしい技術や食べ物などを外国に提供し、世界の中で信頼され、必要とされる国になることです。

 私は戦争を知る世代です。第2次世界大戦で日本がどれほど悲惨な目に遭い、どれほど大きな犠牲と悲しみのうえに敗戦を迎えたか・・・。尖閣諸島や竹島問題に武力で対抗するという考えは、戦争の悲惨さに対する想像力が欠けているのではないでしょうか。

 どうすれば日本はアジアのなかで血を流さずに生きていけるか、想像力をつけてほしい。「九条の会」は普通の市民が一生懸命頑張っています。戦争を知っている世代として、自分が生きている限り戦争の悲惨さや憲法の尊さを伝え、発言し続けていく義務があると思っています。
【2013年1月13日付「しんぶん赤旗」日曜版に掲載】