政府の「革新的エネルギー・環境戦略」は、名前は仰々しいが実に国民世論を無視した政策を打ち出してきたなと思いました。政府は、自分たちで2030年までに総発電量に占める原発比率をどうするかという選択肢をつくり、国民的議論の場で意見を聞いてきました。「直ちに」「10年以内に」原発をゼロにしようというのが国民の世論だったわけで、選択肢自体が不十分でした。「戦略」は、それさえ超えて30年代までに原発稼働ゼロとしました。都合のいいようにあいまいにして「ゼロ」を先延ばしにしました。

<既得権益を擁護>
 「戦略」はさらに、原発を「重要電源」と位置づけ、核燃料サイクルを継続するとしています。政府は従来の原発を「基幹電源」と位置づけてきました。「ゼロ」と言いながら「基幹電源」と言うと論理的に矛盾するから「重要電源」という言い方でごまかしたと思います。ただの言葉の遊びです。

 全体的に国民の意志に沿った「戦略」ではありません。がっかりさせられました。しかし、それさえも閣議決定できなかったのにはがくぜんとしました。電力業者など「原子力ムラ」を守るための既得権益の擁護そのもので、それでは、立地地域の住民が犠牲にされてしまいます。

 福島原発事故は、とんでもない災難をもたらしています。福島の事故は日本のエネルギー政策の敗北です。でも、軌道修正ができない。こんな国は原発を持ってはいけません。