過去2度、横綱に挑戦しながら及ばなかった日馬冨士の夢が現実のものになりつつあります。全勝優勝を遂げた先場所につづき、今場所も初日から快進撃。186キロの魁聖を2秒足らずの速攻相撲で出し投げ(4日目)。ライバル稀勢の里戦はもろ差しからの寄りで完勝(13日目)。14日目には鶴竜を一気の寄りで下し、2場所連続全勝優勝に王手をかけました。

 今場所幕内力士の平均体重が初めて160キロを超えました。日馬冨士は133キロと幕内では2番目の軽量ですが、機敏な動きで巨漢力士を揺さぶってきました。低い重心から突き刺さるような鋭い立会いはさらに磨きがかかっています。研究熱心さも目立ちました。場所前には出稽古で稀勢の里とたっぷり申し合わせました。千代の富士をはじめ過去に横綱になった力士の多くは、苦手力士の部屋によく足を運びました。

 場所中、横綱昇進についてファンも首をかしげるような発言がされました。ある横綱審議委員が「14、15勝なければだめだ」と述べたり、番付編成を行う審判部長が「13勝以上」などと口にしました。横綱昇進は「大関で連続優勝かそれに準ずる成績」が基準です。責任ある人たちが勝手にハードルを上げ下げするのは、全力を尽くしている当事者をとまどわせ、大相撲への信頼を失わせるものです。
【2012年9月23日付しんぶん赤旗に掲載】