<老いて智の若き時にまされる事、若くして貌(かたち)の老いたるにまされるが如し>(『徒然草』)。年を重ねると、知恵は若い時より優れ、それは若い人の容貌が老人より優っているのと同じだ、と兼好法師は言います。

▼きょうは敬老の日。思い出すのは、「老いてこそ、自由人」とますます意気軒高な、医師の日野原重明さんのことです。今年101歳。以前、「
赤旗」のインタビューに応えて、「年齢を重ねるほどに、真理がはっきり感得され、勇気がわいてくる」と話してくれました。▼若き日に結核で苦しみ、戦争中の空爆下で診療を続け、よど号ハイジャック事件の人質となって九死に一生を得た日野原さん。命は与えられたものであり、人生の意味を見つけて大切に生き切る使命がある、という思いに到ります

▼命を助ける医師こそ平和運動に携わるべきだという信念のもと、全国の小学校で「いのちの授業」を行ってきました。「子どもたちが選挙権を持ったときに、憲法9条を守り抜く選択をしてくれるのが願い」と語り、「憲法を守っているのは
共産党だけ」とも▼新書では<平和な世紀を実現したいと思うなら、子どもに任せなさい><世界の10歳の子どもに向けて、日本の10歳の子どもから、「いのちを大切にしましょう」というメッセージを送る運動を提唱したいんです>(『3・11後を生きる「いのち」の使命』)▼人生の大先輩の知恵を子どもたちが手ずから受け取っていく。敬老の日、そんな機会がたくさんあれば、と思います。
【2012年9月17日付しんぶん赤旗に掲載】