今回の値上げは、福島第一原子力発電所事故のツケを利用者に押し付け、多額の負担を強いるものです。東電の一方的な値上げについて、利用者、消費者団体、地方自治体などから相次いで反対の声があがり、批判が噴出しました。しかし、野田内閣、経済産業省は多数の反対の声を押し切り、東電の申請内容をほぼ認め、値上げを認可しました。最終的には、東電が示した電気料金算定の根拠となる総原価5兆7624億円から削減されたのはわずか841億円でした。値上げ幅は、平均10・28%から平均8・46%に圧縮されるにとどまりました。

 認可された総原価には、原発関連費用が多く含まれています。再稼働の見込みのない福島第一、第2原発に関する費用や福島第一原発5,6号機、同第2原発1~4号機の減価償却費のほか、運転を見込んでいない他社原発からの購入電力料も参入されています。

 これらの費用については、内閣府の消費者委員会や消費者庁の検討チームが「明解かつ合理的な説明に至っていない」「原価に参入して利用者に負担を求めるのは適切でない」と批判していました。

 日本弁護士連合会が「2000億円余りについては、明らかに電気料金原価への算入を認めるべきではない」と指摘した事業報酬についても、ほとんど手付かずのままです。電気料金値上げの原因となった原発事故の処理費用について、東電とともに、原発を推進してきた大株主や金融機関は、債権放棄などの負担を負っていません。

 その上、利用者にのしかかる大幅な負担は、原発事故の被害者にも負わされます。原発事故のツケを回す電気料金の値上げは、到底容認できるものではありません。また、電力会社に利潤を保障するなど、さまざまな問題点が指摘された電気料金を決める総括原価方式にもメスを入れるべきです。

【2012年8月31日付しんぶん赤旗に掲載】