外務省条約局長や欧亜局長を歴任した東郷和彦京都産業大教授が24日放映の民放BS放送で、野田佳彦首相の竹島問題をめぐる外交姿勢に異議を唱えました。
東郷氏の発言のポイントは次の通り。

◆いきなり国際司法裁判所に提訴するやり方は拙速だ。「意見の違いがあるのなら、どうして話し合いをしないのか」「外交というのはそもそも対話から始まる」と強調しました。

◆9月開催のアジア太平洋経済協力会議で韓国側との会談に応じない動きを見せていることについても「得策ではない」と批判。李大統領あて書簡を返しにきた在日韓国大使館の書記官を門前払いにした外務省にも「恥ずかしいこと」「やはり話もしないのはやりすぎだ」と疑問を呈しました。

◆野田首相の「歴史認識の文脈で論じられる問題ではない」と語った会見について東郷氏は「竹島問題で一番気になったのはこの部分だ」と発言。「韓国併合」の5年前に行われた日本の竹島領有を、すべての韓国国民が「併合の前座だ」と受け取っており、歴史認識問題を切り捨てた首相の発言は“激情の種”に触れるものだとして、「外交では“売り言葉に買い言葉”はやってはいけない」とクギを刺しました。

◆そのうえで、「対話だから言いたいことを言わせると同時に、言うべきことを言う。それで初めて対話が成り立つ」「相手を対話に引き込む正々堂々たる大外交をやるべきだ」と主張。「向こうがひっぱたいてきたからといって、同じ次元でひっぱたき返すのは得策ではない」と述べました。
【2012年8月26日付しんぶん赤旗に掲載】

松下ゆたかのコメント 外務省の元幹部の中には,東郷さんのような気骨のある人がおられたと感心しています。国が違えば文化感覚も違う。まして、領土問題は両国国民の感情の機微にふれる問題であり、丁寧な対応が必要です。日本の侵略時の被害の爪あとは今でも残っており、その国民感情を自覚してかかる必要があるでしょう。政治家のハデなパフォーマンスがどれほど深刻な影響を与えるか、よく胸に手をあてて考えていただきたいと考えます。