今後のエネルギー政策に関する政府主催の意見聴取会が1日の午後、東京電力福島原発事故で被害を受けている福島市内で開かれました。全国11ヶ所のうち9ヶ所目。発言者30人のうち28人が「原発ゼロ」を明確に訴え、そのたびに大きな拍手が上がりました。

 47社・127人の報道陣がつめかけたものの、狭い会場のうえに告知もインターネットのみとあって、発言者を含めた参加者は約160人。「これで国民の声を聞いたといえるのか」との声が聞かれました。

 原発事故で富岡町から避難し、転々としたという渡辺和則さん(38)は、「がれきの処理も決まっていないし、燃料棒処理の仕方も決まっていない。そして、原始炉建屋の中さえいまだ正確に分からない状況なのに、なぜか結論ありきで原発再稼働され、(福島原発の)避難区域再編なども進められている」と批判。「明らかに負担が多いのは原発推進。原発ゼロから議論を始め、そこに向かって何ができるかを話し合うべきだ」と訴えました。

 福島市の女性は、「野田首相は、大飯(おおい)原発の再稼働にあたって国民の生活のためにといったが、私たちは国民ではないのか」と怒りを抑えるように発言。「私は娘が2人いて、ここで生活をさせて、子どもを産ませて、ずうっとここに置いていいものかどうか、親として切実に考えています」と「原発ゼロ」への思いを語りました。

 小学校の女性教諭は、名古屋市で7月16日に開かれた聴取会での(原発事故の)放射能の影響で直接亡くなった人はいない」という中部電力社員の発言にたいし、「原発事故で避難した人たちの気持ちを全く考えていない」と怒りました。「原発事故のため津波避難者を助けることが出来なかった。病院からの搬送途中で亡くなった入院患者や避難生活を苦に自殺した人。避難者が体調を崩して亡くなった例も数多く報告されている。この方たちは原発事故で亡くなったことになるのではないか。謝罪してほしい」と訴えました。「この意見聴取会で国民の意見を聞いたとアリバイ工作してほしくない」との意見も相次ぎました。
【2012年8月2日付しんぶん赤旗に掲載】