外務省は31日、沖縄返還交渉を含む外交記録文書ファイル76冊を、都内の外交資料館で公開しました。沖縄返還をめぐっては、日米交渉が具体化する前の1967年3月、マクナマラ米国防長官が訪米中の岸信介元首相に対し、日本がアジアの安全保障に協力する場合、米軍は沖縄に駐留するものの、協力しない場合は「引き揚げる」と言及していたことが明らかになりました。

 米国は今も、在日米軍の「縮小、撤退カード」をちらつかせて、日本から「思いやり予算」などの軍事的貢献を引き出しています。マクナマラ長官の発言は、その原因といえるものです。

 在米日本大使館の極秘公電によると、67年3月23日、マクナマラ長官は岸氏との会談で「純然たる私見」と断った上で、当時懸案となっていた沖縄返還問題に言及。「日本が米国の基地保有を欲しなくなった日から一日も長くいるべきではない。米国はサンフランシスコやハワイの防衛のためだけなら沖縄にいる必要はない。日本と東南アジアの前進防衛のために沖縄にいる」と説明しました。その上で、「米国と政治的関係で共同しつつ、軍事面にもこれを及ぼすことに日本が賛成ならば(米軍は)沖縄にとどまるだろうが、そうでなければ引き揚げる」と述べました。

 岸氏は「米国が利己的動機で沖縄を占拠しているのではなく、日本やアジアの安定と安全保障のためにいることを理解している」と述べ、戦時国際法にも違反した米国の沖縄占領を全面的に容認。一方、「一般世論はなかなかそうはいかない」と語りました。
【2012年8月1日付しんぶん赤旗に掲載】

松下ゆたかのコメント この非公開の外交記録文書ファイルの公開によって、アメリカのどう喝と2枚舌の日本支配の実態が明らかになった。戦後、銃剣とブルドーザーによって占領した沖縄を手放したくないアメリカは、返還後も居座り続けるために一計を案じる必要があった。それが岸ーマクナマラ会談だった。

 「米軍は日本を守るために沖縄にいる」「日本がアジアの安全保障に協力しないなら引き揚げる」と恩着せがましく「撤退カード」をちらつかせている。マクナマラは岸首相の眼前で「純然たる私見」と大ホラをつき、米軍は「日本のためにいる」「日本が欲しなくなったら一日も長くいるべきではない」とタンカを切ったのである。

 岸首相はすっかりだまされて、マクナマラに頭(こうべ)を下げて沖縄占領を全面的に容認したのである。沖縄県民のことなど眼中にない売国政治のため、苦しみは今も続いている。