イチローは2001年にプロ野球オリックスからマリナーズに移籍。今季が大リーグ12年目で5年契約の最終年でした。アメリカリーグ東地区で首位を独走しているヤンキースには黒田のほか、マイナーで福留や五十嵐もプレーしています。イチローは今季6月にメジャー通算2500安打を達成しましたが、今月22日時点で打率2割6部1厘にとどまっていました。

 マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドに、ヤンキースのユニホームを着たイチローが登場しました。ファンが見慣れた背番号「51」でなく「31」。3回、古巣へと急変したマリナーズ相手の第1打席。「イチロー・スズキ」の場内アナウンスが終わらないうちに、観客のスタンディングオベーンションが始まった。

 打席に入る前、右手でヘルメットを掲げ、深々と一塁側に一礼。反対方向に向きなおして再度、丁寧にお辞儀をした。「ここではいりいろなことがあり、それが思い浮かぶのかなと想像していた。でも、(ファンの)ああいう反応を目の当たりにすると、真っ白になって何も浮かばなかった。ただ、その瞬間に感激した」。

 感慨に浸ったのもつかの間。次の瞬間には勝負師になっていた。2級目の外角直球をイチローらしい巧みなバットコントロールで中前へ快打。すかさず盗塁も決めた。11年半の思い入れがある球場で打って走り、鮮烈な移籍デビューを飾った。

 メジャー12年目にして新しいチームに身をおくことに、「怖いですよ、環境が変わることは。不安です」と率直に心境を吐露。その上で、「そう決意したので、それ(不安)を断ち切らなければいけない。その覚悟を持っているつもり」。常勝チームで、イチローが新しい一歩を踏み出した。
【2012年7月25日付しんぶん赤旗に掲載】