「あのギラギラした目、あの勢いは、今の僕には出せない。これに命を懸けてもいい、と思っていたんですね」
6月29日に70歳で亡くなった俳優の地位武男さん。一昨年5月、「赤旗」日曜版のインタビューで、出演した映画「戦争と人間」(第2部、1971年)を振り返ってこう語っていました。山本薩夫監督が、財閥の一族と、戦争に反対する人びとを描いた大作。地位さんは、朝鮮人の抗日パルチザンのリーダーを鮮烈に演じています。

 山本監督の生誕100年に寄せてのインタビュー。山本作品では、「あゝ野麦峠」にも出演。撮影時の思い出にふれながら「監督の作品には、レッドパージされても映画を撮ろうとした映画人としての根底の力を感じさせられる」と語っていたものです。山本監督が亡くなった83年、「赤旗祭り」での追悼上映に、スケジュールを無理に空けてあいさつにかけつけるほど律儀な人でした。

 映画での初出演は、武田敦監督の「沖縄」(70年)。県民の苦しみ、理不尽な米軍に対するたたかいを描いたこの作品で軍作業で働く元農民に。この出演が決まった時は、台本を抱きしめて、ボロボロ涙をこぼしたといいます。

 今井正監督の「海軍特別年少兵」(72年)では、厳しくも人情味のある軍曹を好演。「どぶ川学級」(同、橘祐典監督)での工場の組合員役とあわせて、毎日映画コンクール男優演技賞を受賞。「小林多喜二」(74年、今井監督)での拷問される小樽の闘士役も忘れられません。

 「ちい散歩」での気さくで人懐っこい笑顔とともに、数々の名作での熱演もファンの心に残り続けるでしょう。(紀)
【2012年7月16日付しんぶん赤旗に掲載