「緊急事態宣言」は遅れ、避難指示もデタラメ、原発事故情報はまるで伝言ゲーム・・。福島第一原発の国会事故調査委員会で事故対策の中枢を担った菅直人前首相と関係閣僚が証言に立ち、当事の官邸の混乱ぶりが浮き彫りになりました。こんな状況のままで「原発再稼働」とはあきれるばかりです。

 混乱の1つが、「原子力緊急事態宣言」の遅れです。原発の炉心が冷却できなくなるといった重大事態時に発せられるのが原子力緊急事態宣言。これにより原子力災害対策本部が設置され、自治体との速やかな連携や政府機関が総力をあげて取り組む体制になります。

 海江田経産相(当事)が菅首相に、宣言を出すよう要請したのは3月11日午後5時42分。ところが宣言が発せられたのは約1時間半後でした。遅れた理由について海江田氏は国会事故調で「総理の理解を得るのに時間がかかった」と証言。本部をつくる法令上の根拠など、官房長官や官房副長官、おまけに首相補佐官まで加わって探していたので時間が経過していった、と言うのです。

 ところが菅氏は5月28日の国会事故調で「宣言が遅れたことに特に支障はない」といまだに開き直っています。福島県の佐藤雄平知事は、この菅氏の姿勢を厳しく批判しました。「訓練では、発電所からの緊急通報を受けて30分後に政府は緊急事態宣言を出すことになっていた。しかし、今回は、東京電力からの連絡後、およそ2時間半経過していた。県に連絡が届いたのはその1時間後だった」

 この他にも枝野官房長官の住民非難指示発言など、地元関係者から厳しい批判の声が上がっています。
【2012年6月3日付
しんぶん赤旗日曜版に掲載】