フランス大統領選挙とギリシャ総選挙で消費税(付加価値税)増税拒否の審判が下りました。欧州や他の先進国と比べても日本の消費税増税は異常で無謀な企てです。(山田俊英)

 日本のように消費税率を2年間で一気に5%上げるのは異例です。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、2000年から11年の間で一度に 5%以上消費税率を上げたのは10年にハンガリーが5%上げた例があるだけです。2年間で見ても、それ以外に一気に5%上げた国はありません。
 

 ギリシャ総選挙では増税した二大政党が大きく後退しました。
 

49%が「撤廃せよ」

 フランスでは、現行の消費税率19・6%を今年10月から21・2%に引き上げることを決めたサルコジ前政権が国民の強い批判を受けて選挙で敗北しました。オランド新大統領は増税に反対してきました。
 

 サルコジ前政権が打ち出したのは「社会保障のための消費税」。日本の民主党政権とそっくりです。増税分を社会保障財源にあて、企業の社会保障負担 を減らして景気をよくするというものでした。要求していたのは日本の経団連にあたる財界団体、フランス企業運動(MEDEF)でした。しかし、国民は拒否 しました。
 

 大統領選挙後に行われた「今後100日間オランド大統領に何をしてほしいか」の世論調査(複数回答)では実に49%の人が「消費税増税を撤廃してほしい」と答えました。
 

 野田内閣はかつてない経済の落ち込みの中で増税しようとしています。
 

 この間の賃金引き下げや非正規雇用の拡大が家計を冷え込ませていることははっきりしています。これほど長期にわたって家庭の所得や支出が落ち込む中で消費税を増税した国はありません。
 

欧米は富裕層増税

 では財源をどこに求めるのでしょうか。欧米では富裕層への増税や金融投機への課税が相次いでいます。
 

 オランド大統領は年100万ユーロ(約1億円)以上の所得に75%の所得税を課すなど高額所得者への増税を公約していました。大企業の法人税率を 引き上げることや金融取引税の導入も実施することにしています。サルコジ前政権下でも資本所得への課税強化や不動産譲渡益への軽減措置の廃止などが決まっ ていました。富裕層増税は、保守のサルコジ氏も手をつけざるをえなかったほど、流れとして定着しつつあります。
 

 イタリアやスペインでも高額所得や資本譲渡益への課税が強化されています。米国でもブッシュ前政権時代に導入された金持ち減税の打ち切りが焦点になっています。
【2012年5月20日付しんぶん赤旗に掲載】

 

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