9つの競技団体で補助金の不適切な受給があった問題で、スポーツ界に横たわる「古くて新しい問題」が浮かび上がりました。12年前、スポーツ界は同じような騒動を経験しました。日本オリンピック委員会(JCO)傘下の15団体が、補助金や助成金を不正に受け取っていたことが発覚。このうちの5団体は、今回も名前があがっています。公金を扱うスポーツ団体役員の倫理観と責任感の不足は以前と変わっていません。同時に、背景にも共通点があります。

JOCが設置した第三者特別調査委員会の報告書は問題の誘引についてこう述べています。「(競技団体の)経済的基盤の脆弱(ぜいじゃく)性の状況改善をしないまま放置してきた」。協議団体が困難な財政を強いられている実態は長らく続いています。

民主党がトップ選手の強化事業費を「事業仕分け」の対象にした2009年12月。競技者たちの抗議の記者会見で、アーチェリーの山本博選手は「五輪以外の遠征費はすべて自己負担」と窮状を語りました。補助金を受ける競技団体が3分の1を自己負担する補助金制度についても、「その3分の1が払えない団体もある。実情を踏まえてほしい」と訴えていました。

問題になった競技団体をみると、財政規模が小さいところがほとんどです。助成金からの報酬を受けた役員が、そのお金を「寄付」という形で「3分の1」の負担分を肩代わりした今回の不適切使用問題。再発防止のためにスポーツ界が不正を許さない風潮をつくりあげることはもちろんですが、実情に即した制度の改善と、競技団体への抜本的な国の財政支援が求められます。
【2012年3月29日付「しんぶん赤旗」に掲載】

松下ゆたかのコメントスポーツ界への国の支援がこんなに脆弱でも、日本のアスリートが頑張っていることに感動します。国の支援を厚くすることは当然ですが、引退後のあり方についても検討していく必要があるのではないでしょうか。「企業スポーツ」を見直して、青少年スポーツを本格的に育成していくための指導者を角界に分厚く処遇していくことを提案します。アスリートの年金制度も検討課題にすべきです。