日本の巨大メディアを、欧米のメディアと比較してみたいと思います。1971年にニューヨーク・タイムズ紙が、ベトナムの「トンキン湾事件」(1964年)は、アメリカ軍部のねつ造だったことを示すアメリカ国防総省の秘密報告書ーー「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したことです。ニューヨーク・タイムズ紙は、この報道によって、ジャーナリズムの最高の名誉とされるピューリッアー賞を受賞しました。

秘密資料を持ち出し、ニューヨーク・タイムズ紙のシーハンン記者に手渡したのは、国防総省の元職員・エルズバーグでした。副社長のジェームズ・レストンはシートン記者に「これは本物か」と聞き、シートンが「本物です」と答えると「わかった」とゴーサインを出したそうです。その後レストン副社長は部長会を開いて一席ぶち、社をあげて政府とたたかいを開始したのです。財政的にピンチになったら、輪転機を2階にあげて社屋の1階を売りに出す。それでも金が足りなければ、3階、4階、5階と社屋を売り、最上階の14階まで輪転機をあげるような事態になっても、タイムズは戦う・・・と覚悟を決めて戦いぬいたのです。

日本の新聞社は政府と戦うどころか、社屋を建てるために政府から土地を分けてもらっているのです。読売は大蔵省が持っていた土地に新社屋を建てたばかりです。毎日の敷地のうち竹橋よりの部分は皇宮警察の寮、つまりは国有地。日経もサンケイも社屋がたっているところは、もとはといえば大蔵省の土地です。そして、朝日だって築地の海上保安庁の跡地に社屋をつくろうとしているのです。日本の大新聞という大新聞がすべて政府から土地の払い下げを受けて「言論の砦」?を立てている。これで、政府相手に「ケンカ」?やることなど、どだい無理な話でしょう。