東京電力福島第1原発の事故をきっかけに、欧州各国では原発推進政策の見直しが進みました。ドイツ、スイスではそれぞれ、2022年、34年までにすべての原発の稼働を停止し、廃炉に進む法律が成立。イタリアでは国民投票で、政府の原発復活計画を圧倒的多数で拒否しました。

「日本で起きたことは世界にとっての転換点だ」東日本大震災により、福島原発事故が起こった翌日(3月12日)、ドイツのメルケル首相は、記者会見で、事故の深刻さをこう表現しました。同首相は、「ドイツは大地震や津波に脅かされているわけではない」が、福島の「非常に深刻な状況」を踏まえると、「(政府は)原発の安全性と(放射能汚染からの)人間の保護を第一に置く。妥協は許されない」と強調しました。

その後、首相の政治的決断による対応は素早いものでした。14日には原発の稼働延長計画の3ヶ月凍結を発表。15日には、国内にある17基の原発のうち、1980年以前に稼働を開始し、老朽化した可能性がある7基について、運転を3ヶ月停止し、安全性を点検するとしました。

4月16日には政府と16の州の首相がエネルギー政策の転換について話し合い、原発の早期廃止で合意。22年までに全原発の稼働を停止する政策を6月に閣議決定し、7月8日には法律が成立しました。一方で、原発の代替エネルギーとして、風力などの再生可能エネルギー発電を重視。再生可能エネルギー促進計画も法律にしました。

スイス政府は5月、原発維持の危険性、新たな安全基準に基づく稼働維持の費用を考慮して、50年の耐用年数が切れた原発から稼働を停止し、廃炉に向かうことを決め、上下両院もこれを承認しました。

旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を受けて87年に原発全廃を決定していたイタリアでは、08年に発足したベルルスコーニ政権が、13年から4ヶ所で原発を新設する計画を発表していました。これに対し、福島原発事故以降、反原発運動が盛り上がり、原発復活の是非を問う6月の国民投票では反対票が94%に達しました。ここ10数年間、国民投票は成立していませんでしたが、今回は、野党や労働組合などが投票を呼びかけ、投票率は成立要件の50%を超えました。

原発大国フランスでも最大野党の社会党が原発依存率の半減を主張し、原発問題は来春の大統領選挙の争点に浮上しています。
【2011年12月25日付「しんぶん赤旗 」に掲載】

松下ゆたかのコメント

ドイツのメルケル政権の政治決断は素晴らしいものです。日本の事故を映像で見たメルケル首相は、「人間の保護を第一に置く」と決断し、与党も野党も産業界も国民もこれを承諾したのです。野田内閣は、来年度の予算にも、原発に固執し4188億円も計上しているのです。今回の大惨事でも、日本の常識=世界の非常識がはっきりしました。日本の政治の後進性を転換させるために、共産党 を思い切って大きくしてください。新年から「しんぶん赤旗 」を、ぜひ購読してください。日本共産党 への入党をご検討ください。