「例年と変わらない甘さだ」。東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県亘理(わたり)町と山元町で、イチゴの赤い実が実り、出荷が始まりました。特産の「仙台いちご」の復活です。支援と連帯で希望の灯がともりました。

海岸から約3キロの亘理町長瀞(ながとろ)でイチゴの栽培を再開した小野幹彦江さん(64)。赤く色づいた実を手にとり、「みんな待ってるべなぁ」とやさしい眼差しで見つめます。本格的な出荷は来年1月中です。大震災3日後に見たハウスの惨状は忘れられません。「黒々としたヘドロの中に浮かんだ真っ赤なイチゴ。ショックでただ立ちすくんでいただけ」でした。

家族と親戚でハウスの泥だしを1ヵ月半やっても終わりません。「言葉もなくなった。苦しくなって、もうやめようと思った」

6月に入り農協や日本共産党 のボランティアの助けでやっと先が見えてきました。稲は栃木県の農家などから無償で提供してもらいました。例年より少し遅れたものの9月下旬、前年の8割くらいの苗を植え、11月に入り白いかれんな花がつきました。「イチゴに負けねぇでがんばっぺなぁと後押しされた」という小野さんーー。

「みんなの力でここまでこれた。感謝の気持ちでいっぱいです。震災から復活した亘理のイチゴを食べてもらいたい」。

震災でイチゴ農家にはこれまでにない大きな負担がのしかかりました。そのひとつがイチゴへの大量の水。週に2~3回、トラックに1・5トンの水を乗せ、3~4往復しなければなりません。亘理町に調査に入った日本共産党紙智子議員 。参院農林水産委員会(5月2日)では「早くやりたい」とのイチゴ農家の声も紹介し、除塩や排水機場の整備、被災農家への支援などを強く求めました。小野さんは正月明けの出荷に向け、心に誓います。「まだイチゴを作れない仲間のためにも、がんばんなきゃいけねぇ」。
【2011年12月25日号「しんぶん赤旗 」日曜版に掲載】