【宇野】先進資本主義国の窮状と対照的に中国は成長しています。

志位 】中国では、1978年から進めた「市場経済を通じて社会主義へ」との改革開放路線のもと経済が発展し、絶対的貧困人口が6億人減りました。こうした道を選択したのは合理的だったと考えています。

とはいえそこで起こるすべてを肯定的にみるわけにはいきません。GDP(国内総生産)で日本をぬいた中国ですが、1人あたりだと10分の1。減らしたとはいえ絶対的貧困人口は2億人。GDP世界2位といっても途上国なのです。格差の拡大などの問題もある。できあがった社会主義を代表する国ではなく、社会主義への探求が開始されている国だと、私たちは見ています。

【宇野】日本でも00年以降、貧困層や格差の拡大が顕著です。小泉改革でまじめに働く若者を中心に経済的に苦しい人びとが増え、08年には劣悪な環境で働く労働者の反乱を描いた小林多喜二の戦前の小説「蟹工船」がベストセラーになりました。共産党 が自民党政治への不満の受け皿になる可能性もあったと思いますが、現実には民主党が批判票を集め、政権交代を実現させました。

志位 】09年の総選挙でなぜ民主党が勝ったのか。「反自民」の旗を掲げたからです。国民は政治を変える願いを民主党に託したのです。政権交代直後の民主党政権の政策には、子ども手当て、高校授業料無償化、普天間の県外、国外移転、など、前向きの要素もありました。

ところが、鳩山、菅両政権は国民を裏切り続けた。民主、自民、公明の3党合意で子ども手当てを廃止。高校無償化は見直し。普天間も「辺野古移設」に戻る。野田政権ではTPP(環太平洋連係協定)の交渉に参加し、消費税増税まで言い出す。看板は民主党でも、中身は自民党とすっかり同じになりました。
<次回に続く>