資本主義は限界にきたのだろうか。欧州で財政危機が続き、米国では格差に不満を募らせたデモが広がる。自民党から民主党へと政権の担い手が移った日本では、政治の低迷が続き、未来像を示すことはできないままだ。11月の政治時評は、社会主義を守り、野党に徹してきた立場から、共産党志位和夫委員長 が、東大教授の宇野重規さんとともに世界と日本の現状と課題を論じ合う。

【宇野】欧州の財政危機が世界を揺るがせています。ギリシャやイタリアで政権交代が起き、欧州連合(EU)各国を巻き込んで政治もきしむ。資本主義の矛盾が噴出しているようにみえます。

志位 ジョージ・マグナス氏が米国の経済通信社・ブルームバーグに寄稿した論評が反響を呼んでいます。現在の世界の危機の本質を知りたければ、カール・マルクスを読め、というのです。マグナス氏は米国の銀行バンク・オブ・アメリカなどをへて、グローバルな投資・証券業務を手がけるUBS銀行の上級顧問を務める、金融界の大御所。その彼がマルクスを読めといったので、話題となっています。

【宇野】なぜ、いま、マルクスなんだと思いますか?

志位 マグナス氏は、マルクスが「資本論」で語ったこの言葉に注目します。「1つの極における冨の蓄積は、同時にその対極における貧困の蓄積である」「すべての現実の恐慌の究極の根拠は、一方では大衆の貧困、他方では生産力の無制限の発展を求める衝動にある」

言い換えるとこうなります。資本はより大きな利潤を得るため、どんな制限も乗り越えて生産力を発展させようとする。他方、利潤を得るためあらゆる手段を使って労働者の搾取を追求する。しかし、貧しい人びとが増えれば、企業がつくるモノやサービスが消費されない。過剰生産が生じ、モノはあるのに社会全体が苦しむ「恐慌」が起きるー。このプロセスがいま、発達した資本主義の国々で起きているのです。
<きょうは、ここまで。>

松下ゆたかのコメント

この企画は、歓迎です。先進資本主義国で起こっている金融危機と貧困問題の根源にメスを入れ、その打開のプロセスを探求するもので、「朝日」では初めてです。私のブログで連載しますので、ご期待を!