民主党機関紙「プレス民主」(4日付)には「マニフェスト」(政権公約)の6文字が見られませんでした。臨時国会の衆院(31日)、参院(2日)で代表質問に立った同党議員の口からも「マニフェスト」(政権公約)のマの字も聞かれませんでした。野田佳彦首相就任後の2国会連続で民主党は「国民との約束」-マニフェストに口をつぐんだことになります。

◆ここに1つのメモがあります。A4で3枚。2011年3月23日の日付、「『21世紀日本の国づくり』構想について」のタイトルがついています。東日本大震災発生から13日目、政府として震災・原発事故後の日本をどう構想するか、その大まかな方向性を記しています。首相官邸の一部で「仙谷メモ」と呼ばれます。1週間前に内閣官房副長官として首相官邸入りした」仙谷由人民主党代表代行(当時)が書いたとされなす。

◆箇条書きの1項目目に「民主党マニフェストのリストラと“安楽死”」とあります。大震災を契機に09総選挙マニフェストを、なんと震災のドサクサに紛(まぎ)らせて死文化させるというわけです。

◆「メモ」はこう続けます。東日本大震災は「次に向けての『陣痛』と捉えるべき」、めざすは「国家の再生であり新生」-。そのために財政・社会保障一体改革、開国・グローバル化を推進する政党連立」、「衆参連携」による「『救国内閣』的な決断と熟議」の政治体制をめざすとしています。ずばり大震災という「陣痛」を通じて消費税増税、TPPなど財界路線を全面的に推進する民自公大連立政権へ向ける政治プランでした。メモが示す方向性は3月時点の民主党の上層部で共有されています。

◆その後、いろいろな経過がありますが、マニフェスト路線を後退させ、民・自・公「3党合意」で決定的にマニフェスト離れをしました。「メモ」に書かれていた通り、「安楽死」させたのです。
【11月7日付「しんぶん赤旗 」に掲載】

松下ゆたかのコメント

選挙を経ず民主党で3人目の首相となった野田首相にとって政権の正統性を裏付ける根拠は有権者との約束である09マニフェストです。国民との約束を投げ捨てて、何を目安に野田首相は政権を動かしているのか。野田首相は財界とアメリカの支持を頼りに、両者の「ご用聞き」政治を迷走しています。