アメリカと共同開発した「ミサイル防衛」システムを第3国に供与するなど、武器輸出禁止3原則を見直す動きが野田政権のもとで強まっています。武器輸出禁止3原則の根本にあるものは、「平和国家なのだから死の商人にはならない」という素朴なものです。素朴だからこそ広く受け入れられ、9条のコロラリー(派生原則)として正当化されてきた。その原点、歴史をしっかり振り返り、かみしめることこそがいま大切だと思います。ポーランドへの「ミサイル防衛」システムの配備や戦闘機の共同開発・販売は、まさに武器輸出禁止の理念を根本的に否定するものです。

国家に軍事的権限を与えない憲法9条から、私たちが60年かけて引き出してきた豊かな文化の価値は、強調してもし過ぎるということはないと思うのです。武器輸出禁止3原則のほか、非核3原則や海外派兵はしないという国会決議など、さまざまな形で9条を準則化するものがつくられてきました。

それだけではありません。改憲の動きに抗し各地に「九条の会」ができているとか、「憲法改正」といえばみんながパッと9条のことを思い浮かべることも特有の文化ではないでしょうか。そして、自衛隊が長い間、人を殺さずにこられたことも、私は憲法9条のもたらした文化の1つに入れて考えたいと思っています。

私自身は、自衛隊は憲法9条に違反すると考えていますが、政府の立場でも自衛隊は「軍隊」ではありません。普通の軍隊ではないものとして生まれ展開してきた以上、そもそも自衛隊が海外へ出て行くことはできないのではないか。自衛隊の海外活動を本来任務に格上げする自衛隊法改定がなされましたが、自衛隊とはどういう組織なのか、詰めた議論を抜きに進められました。自衛隊が軍隊化する意味で違憲となるはずです。

PKO(国連平和維持活動)での自衛隊の武器使用基準を緩和しようという動きもあります。他国軍隊などの「警護」のために武器使用を認めようという主張ですが、これは集団的自衛権の行使に限りなく近づきます。「駆けつけ警護」となれば、完全に違憲です。

自衛隊の海外派兵や武器使用基準の緩和は、実態としては日米同盟強化の要請のもとに進められています。しかし、世界的規模で自衛隊が米軍との協力をすすめ、アメリカの世界戦力に沿って在日米軍基地の再編を進めるのは、安保条約自体からもはみ出している。憲法にも条約にも基づかない軍事展開は、立憲主義という観点から極めて由々しき事態だといわざるを得ません。

【11月4日付「しんぶん赤旗 」に掲載】