「1%の人が99%の冨を独占している」「私たちは99%だ」--。世界の金融センター、ニューヨークのウォール街で9月中旬、若者らがあげた「格差反対」の声が、1ヶ月間で世界中に広がりました。草の根のさまざまなデモ行動が15日、82ヶ国951都市で行われたといいます。一握りの大企業による利益追求が大多数の人びとに貧困をもたらし、人々の憤りをこれほど””グローバル化”させている現実に、衝撃と希望を覚えないでは」いられません。経済のあり方の抜本見直しはもはや待ったなしです。

ギリシャから始まった財政危機はスペイン、ポルトガル、イタリアと南欧に広がり、欧州経済の動向が世界を揺さぶっています。日本では1990年代末の「不良債権処理」に、米国では「リーマン・ショック」後の2008年に、銀行救済の公的資金投入が行われ、財政赤字を膨らませました。いま欧州でも銀行救済が行われようとしています。「投資家の懸念払拭」がその引き金です。

銀行救済のために国民に負担を転嫁するのは不当です。おまけに、ギリシャの財政危機の裏には米国一の投資銀行ゴールドマン・サックスによる隠ぺい工作がありました。投機の場と化した金融を規制することは、G20の大きな課題であったはずです。

一方で、欧州はいま金融取引への新たな課税を検討しています。為替市場などを混乱させる投機目的の取引を抑えようとするものです。金融取引税の導入は、投機の危険が明らかになる度に浮上しながら、実現しませんでした。世界的に導入しないと効果が薄いとされる中、金融センターを抱える米国やイギリスなどが、投資が妨げられると主張して、反対してきたものです。しかし、今回は欧州連合が導入をめざし、カンヌでのG20首脳会議でも取り上げられると見られます。

G20首脳会議はこれ以外にも金融規制を話し合う予定です。米国などの反対を抑えて金融規制を強めることは、広がる“格差反対”の声にも応えるものです。日本では歴代政権が大企業と銀行に甘い姿勢を取り続けています。東京電力が引き起こした重大事故の賠償でも、民主党政権は原発利益共同体の一員である大銀行を免罪しています。経済のあり方を転換するには政治の変革が不可欠なことを示しています。
【10月18日付「しんぶん赤旗 」に掲載】