野田新政権発足で、TPP(環太平洋連携協定)のウール推進が懸念されています。この問題について、JA全中(全国農業協同組合中央会)の冨士重夫さんに、TPP反対の思いを聞きました。


TPPは、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど先進国・農業輸出大国との間で、関税を例外なしに撤廃し、非関税障壁もなくそうというものです。これは、まず食料自給率向上を決めた閣議決定に反します。さらに、非関税障壁とされる、金融サービス、医療・医薬品、教育、政府調達などさまざまな分野のルール、制度も大きく変えます。

農林水産省はTPPに参加した場合、食料需給率が現在の40%から13%に落ちると試算しています。これでもかなり控えめな数字だと思います。いまコメ・小麦・乳製品などは国が貿易を管理する仕組みですが、TPPはそれをやめ、関税ゼロにします。相手は世界で最も農産物の安いアメリカとオーストラリアです。日本農業が壊滅的打撃を受けることは間違いありません。

農水省試算には野菜や果物は入っていませんが、こうした品目にも当然影響が出てきます。アメリカのカリフォルニアは野菜・果物の巨大生産地です。南半球のオーストラリアと競争できる「強い農業を」といいますが、国土条件などの違いを無視した暴論です。そのために農家に所得補償をしたらとんでもない金額になります。日本は、限られた国土や資源を有効活用し、循環型で持続可能な農業を組み立てるべきです。

試算以上の自給率低下、国民生活への悪影響、農業の多面的機能の喪失、国土荒廃など、多大な損失をもたらすTPPは「絶対反対」というのが私たちの不動の確信です。震災復興のためにTPP参加を急げという議論がありますが、全く逆さまです。震災と原発事故で、廃業や自殺者さえ出ている農家の危機のなかで、さらにTPPに参加するなど、考えること自体が間違いです。

私たちはTPP反対を一貫して主張し、農林漁業団体、消費者団体を中心に、医療、教育、政府調達関連など広範な団体とネットワークをつくり、1000万署名に取り組んできました。署名は1120万署名を超え、JA全中としても過去最大規模に広がりました。

当初はマスコミ論調もTPP推進に傾いていましたが、年明け以降、世論の動向が変わってきました。マスコミの世論調査でも過半数がTPPは慎重にすべきだと答えています。新しい内閣で、TPp参加交渉が加速される危険があります。11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議にむけて、運動のさらなる展開が必要です。日本共産党とは、TPPや震災復興の問題で、ほとんど考え方を共有しています。引き続き、日本農業と地域社会の持続的発展のために、取り組んでいきたいと考えています。