岩手県葛巻町が自然エネルギーへの取り組みで大きな注目を集めていまう。町を訪ね、役場の担当者の案内で施設を見学、関係者から話を聴きました。葛巻町は、岩手県北東部に位置し、標高400㍍以上が95%を占める高原の自然豊かな町です。人口は7417人。面積は435平方㌔㍍。

町は、風力、バイオマス、太陽光など多岐にわたる自然エネルギーに取り組んでいます。風力発電では、1000㍍の高原という世界でも珍しい高地に出力400㌔㍗の風車3基と1750㌔㍗の風車12基が回っています。年間5600万㌔㍗時の電力を供給しています。

風車3基は、町が出資する「エコ・ワールドくずまき風力発電株式会社」が1999年に建設したもの。年間2000万円の発電収入を得ています。12基の風車は、電源開発が全額出資する「株式会社グリーンパワーくずまき」が2003年に建てました。町には固定資産税3000万年が入るとのことです。

バイオマス発電とは生物資源に由来するものです。約1万1000頭もの牛の糞(ふん)尿を活用しようと、まず葛巻町畜産開発公社が管理する「くずまき高原牧場」でバイオガスプラントが稼動しました。牛200頭分の糞尿をもとに37㌔㍗の発電能力を得ています。また、木質チップを活用したバイオマスガス化による発電120㌔㍗も行っています。木質ペレットをボイラーで燃やし、135万㌔㍗のエネルギーを老人保健施設などにきょうきゅうしています。

太陽光発電では、中学校や高原牧場などに90㌔㍗の設備を設置。個人住宅の太陽光発電設置には1㌔㍗当たり3万円の補助を実施しています。小水力の活用では、水車でひいた風味あるそば粉をつくり提供する「森のそば屋」が営業し、町民有志による証明用の発電が試みられてきました。

こうした取り組みで生まれる電力については、バイオマスや太陽光の発電は、大半が中学校や各施設自身で消費されますが、風車が起こす年間5600万㌔㍗時の電力は、葛巻町全体で年間消費する電力3400~3500万㌔㍗時の160%に達します。葛巻町で起こす全発電量は標準世帯のおよそ1万7000世帯分に当たります。葛巻町の世帯数は2900です。

いま勝つし巻町の人々は「クリーンエネルギーの町」を誇りにしています。かつては「葛巻町には何もない。鉄道も高速道路も走っていないし、山の町でありながら温泉も出なければ、スキー場もない」と語られていました。たいへんな変わりようです。

岩手県は山国であり、雪国です。そのハンディを生かして、昔から“町おこし”に熱心です。私が、15年ほど前に視察に言った時、駅前の書店に「岩手の日本一」という本が並んでいました。木質チップで木鹸(もっけん)という石鹸をつくったり、骨付きの鮭缶(しゃけかん)をつくって健康ブームのヒット商品を開発した話を知り、感動したことを覚えています。これからの日本の模範ともなる「自然エネルギー先進町」をつくった葛巻町にあっぱれ!!