テレビ小説50周年。小松昌代チーフプロデューサーは「『おしん』のような、朝ドラの主流だった女性の一代記をやりたかった。これまで夢や目標に向かって突き進むという話が多かったのですが、そうではなく普通の市井の女性をヒロインにしたかった」といいます。

「昭和」の時代の物語。戦争をはさんで主人公の20年を超える歳月が刻み込まれていきます。「その時代にいた人たちの多くが、その時どう思っていたか、誠実にそこに向き合いたいと思いました」

苦しい時代に小さな希望を見つけて生きていこうとするヒロイン。涙と笑いが交錯します。戦争はそんなささやかな日常をも根こそぎ奪ってしまいます。怒りと悔しさ。そして、生きることの大切さ。

小松さんは、岡崎栄企画・脚本の「大地の子」(95年)にデスク補助として参加。以来、岡崎さんの手がけるドラマのプロデューサーを務めてきました。「海峡」「望郷」「遥かなる絆」といった戦争と人間をテーマにしたものや、「ディロン~運命の犬」などを一緒に制作しました。「岡崎さんは10代で終戦を迎えて、あの時代を知っています。平和に対する希求。根底はそこdあし、ドラマを作っていく上でのベースとして植え付けられました。今回は岡崎さんと離れて、海へ1人で出ていくような気持ちですね」

「おひさま」には、30、40代の女性からの反響が寄せられているのが特徴です。「子どもと一緒に見ているという声をいくつもいただきます。東京大空襲にあった育子が、初恋の人を亡くしたけれども生きて安曇野に帰る場面を見て、小学生の子どもさんが『よかったね』とつぶやいたそうです」

物語は終戦へ。母親となった陽子に転機が訪れます。「陽子はいろんなことを巻き起こしていくのではなく、人々のことを受けとめて、まわりも輝かせていきます。井上真央さんの力がものすごく大きいです」

そば屋の丸庵の家族をはじめ、登場人物1人ひとりが個性的。「出演者のみなさんが役を育ててくださっています。話もどんどんふくらみますね。もう一度出ていただこうとなります」と小松さん。英語教師のオクトパス(近藤芳正)や女学校時代の友人らが再び陽子の前に現れます。   <8月1日付「しんぶん赤旗」に掲載>

私は、終戦4ヶ月前に名古屋で生まれ、戦後の昭和24年頃に埼玉県和光市(大和町)に移り住み、子ども時代をすごしました。どこの家も貧しかったけれど、みんな仲良しで助け合い暮らしていました。数年前まで戦争だったとは思わず、「良い時代」を送ることができたと感謝しています。「おひさま」にはそんな良き時代を思い返す場面がたくさん出てきます。多くの若い人たちに見ていただき、時代を継承してもらいたいと願っています。