復興対策で問題になっている「水産復興特区」について、加瀬和俊(東大社会科学研究所教授)さんに聞きました。
経済同友会は「漁業権の証券化」を主張して、漁業を営む権利を売買する仕組みを提言しています。日本経団連系のシンクタウン・日本経済調査協議会(日経調)は、個々の漁業者に割り当てられ漁獲量の権利を売買する仕組みを提案しています。これらの提案は新しい主張などではなく、戦前に戻ろうとするものです。
戦前、沿岸での漁業権は借金の担保にもなり、売買もされました。免許の方針が資本の所有権を重視していたので、経営的に有利な漁業権は地主などの金持ちが独占し、漁業者はその漁業を操業できないか、漁業権保有者に安い賃金で雇われるほかありませんでした。
この状況は、戦後漁業法によって打破されました。地元の海で実際に働いている漁業者を組合員とする漁協が優先して漁業権を免許され、組合員がその漁業権を行使できることになったのです。金持ちの漁業権買占めを防ぐため、漁業権の貸付・売買が禁止されたました。
日経調の「提言」は、外国人を含めた「投資者」などの利益を重視することが、漁業復興につながると主張しています。儲かる漁業権を金持ちが買い集められる仕組みに変えるものであり、戦前の状態に戻すという主張です。
彼らが具体的に期待しているのは、定置網漁業と養殖業だと思います。外部の企業は、資本規模の大きい企業の方が適切だとして漁協に優越して免許を受けたい。「特区」制度でまず被災地でそれをできるようにし、次いで全国化しようという計画でしょう。
また、外部企業が漁業権を受けると海が売られる危険性が強くなります。原発をつくったり、基地や空港を海に拡張するためには周辺海域の漁業権を消滅させなければなりませんが、専業的な漁業者はこれに強く反対します。一生働くつもりの漁場がなくなってしまうから当然です。
このため日本の原発はどれも建設前に漁業者・漁師との交渉に長い時間をかけています。これに対して大企業1社が「証券化」した漁業権を買い集めてしまえば、原発企業にこれを高く売って撤退することはすぐにできます。定置網や養殖業の権利をもっていても電力会社はそれよりはるかに高い値段で漁業権証券を買ってくれるでしょうから、外部の企業は確実に儲かるでしょう。
つまり外部企業が本当に漁業をすれば沿岸漁業者の権利がそれだけ失われますし、漁業をやらないで海を売るとすれば、沿岸漁業そのものがその地域からなくなるということになってしまうのです。
大変よく理解できました。脱法的な「特区」にだまされないように、世論を広げましょう。
経済同友会は「漁業権の証券化」を主張して、漁業を営む権利を売買する仕組みを提言しています。日本経団連系のシンクタウン・日本経済調査協議会(日経調)は、個々の漁業者に割り当てられ漁獲量の権利を売買する仕組みを提案しています。これらの提案は新しい主張などではなく、戦前に戻ろうとするものです。
戦前、沿岸での漁業権は借金の担保にもなり、売買もされました。免許の方針が資本の所有権を重視していたので、経営的に有利な漁業権は地主などの金持ちが独占し、漁業者はその漁業を操業できないか、漁業権保有者に安い賃金で雇われるほかありませんでした。
この状況は、戦後漁業法によって打破されました。地元の海で実際に働いている漁業者を組合員とする漁協が優先して漁業権を免許され、組合員がその漁業権を行使できることになったのです。金持ちの漁業権買占めを防ぐため、漁業権の貸付・売買が禁止されたました。
日経調の「提言」は、外国人を含めた「投資者」などの利益を重視することが、漁業復興につながると主張しています。儲かる漁業権を金持ちが買い集められる仕組みに変えるものであり、戦前の状態に戻すという主張です。
彼らが具体的に期待しているのは、定置網漁業と養殖業だと思います。外部の企業は、資本規模の大きい企業の方が適切だとして漁協に優越して免許を受けたい。「特区」制度でまず被災地でそれをできるようにし、次いで全国化しようという計画でしょう。
また、外部企業が漁業権を受けると海が売られる危険性が強くなります。原発をつくったり、基地や空港を海に拡張するためには周辺海域の漁業権を消滅させなければなりませんが、専業的な漁業者はこれに強く反対します。一生働くつもりの漁場がなくなってしまうから当然です。
このため日本の原発はどれも建設前に漁業者・漁師との交渉に長い時間をかけています。これに対して大企業1社が「証券化」した漁業権を買い集めてしまえば、原発企業にこれを高く売って撤退することはすぐにできます。定置網や養殖業の権利をもっていても電力会社はそれよりはるかに高い値段で漁業権証券を買ってくれるでしょうから、外部の企業は確実に儲かるでしょう。
つまり外部企業が本当に漁業をすれば沿岸漁業者の権利がそれだけ失われますし、漁業をやらないで海を売るとすれば、沿岸漁業そのものがその地域からなくなるということになってしまうのです。
大変よく理解できました。脱法的な「特区」にだまされないように、世論を広げましょう。