文部科学両省は1月18日、今春卒業予定の大学生の就職内定率を発表したが何と68・8%、調査を開始した96年以降で最低。一方、高校生の内定率は少し回復したが70・6%と大変厳しい。

 教育評論家の尾木直樹さんは「いちばん大きな問題は、国が雇用政策に本気でとりくんでいないことです。学生の自己責任、大学の自己努力にまかせています。」「もうひとつは若者を育てるという企業の責任と自覚がないことです」と述べているが、全く同感だ。

 この問題で、政府の対応が鈍感だ。枝野官房長官は「新年度の予算案に、雇用政策を盛り込んでいる」と語っているが、卒業するまでに解決させる考えが皆無 だ。「学校で学んだことを社会で生かしたい」と胸をときめかす卒業シーズンであるはずなのに、真っ青になっている学生と両親の必死な気持ちをわかっていな い。日本の未来を背負って立つ青年に、社会が「レッドカード」を突きつけるようなことをしてはいけない。

 政府は、この問題を最重要課題として位置づけ、経団連や経済同友会とともに「緊急雇用打開協議会」を開き、全国各地で「就職説明会」を開催すべきだ。パイロットや客室乗務員を整理解雇している日本航空が、外国人労働者を採用していることは言語道断だ。

 ノーベル化学賞を受賞した鈴木章さんや根岸英一さんが強調している「資源のない日本は、人間の育成にもっと力を尽くすべきだ」という提案を、政府も企業も しっかり認識するべきだ。いずれにしても時間的余裕はない。政府は、経済界に新卒者の採用数確保を強力に働きかけるとともに、就職活動の現場からの切実な 声に応え、いますぐ必要な対策を強化すべきだ。