明日への遺言 | SIMPLE JCI

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元ドルヲタが薄ッぺらいことを書く日記

終戦後行なわれた戦犯への軍事裁判で、東海軍(東海地方の人間によって編成された日本陸軍・満州には関東軍が配置といったように)の司令官岡田中将(藤田まこと)の「法戦」の物語。

名古屋市大空襲で、爆撃に参加した搭乗捕虜を「無差別爆撃」の罪で斬首した件についてのの裁判の経過を

岡田中将の人となりを合わせながら重く丁寧に描いた作品である。


第一次世界大戦後のジュネーブ協定で「軍需工場などのない地域の爆撃の禁止」という条文があったにもかかわらず、第2次世界大戦以降も続けられている事実。

太平洋末期、もう、敗戦色が強まり、既に兵器を作る技術も物資もない日本を戦意喪失させるための市街地への無差別爆撃。

名古屋空襲の爆撃を実行した搭乗員が打ち落とされて投降した。

東海軍は簡易な略式起訴を持って軍事裁判をして、搭乗員達を斬首した。

これが「ただしい裁判」で行なわれたのかそうでないかの「軍事裁判」になったのである。


岡田側の弁護人もアメリカ人でありながら「無差別爆撃」の証言者を集め、「違法行為としての無差別攻撃」を糾弾する。田中好子、蒼井優の証言シーンが涙を誘う。

岡田中将は「あくまでも自分の責任で処刑命令をしたのであって、部下の責任はない」と最後まで言い張った。

一緒に被告とされた19人の部下全員の命を助ける為に。


ただそれは斬首刑の責任が実行者でなく最終責任者であるのに、無差別爆撃は搭乗員にも責任とするならば

岡田中将の部下も違反者として「死刑」の判決を受けることになる。矛盾なのだ。

それでも岡田中将は「自分だけの「罪に」なるように、部下達が減刑されるよう、法廷で戦い抜いた。

結果、中将のみ死刑、他のものは重労働刑などで死刑にならずにすんだ。


その岡田中将に判事側も、検事側も心を寄せ、中将の命を救おうと動く。

「搭乗員の死刑」は「復讐」であったと認めれば、、復讐が爆撃の被害者の名古屋市民の総意と認めれば(おそらく自分もその気持ちで処刑したと思う)中将の命を救うことになる。

だが「あくまでもただしい裁判による執行」を主張しつづけたのだ。

判決を言い渡されたあとも、戦犯で服役している人間達の心の支えとなった岡田中将。


また富司純子扮する妻をはじめ、ただ裁判傍聴する家族の描写がとても暖かい。

人間の「営み」「命」の大切さというものを見てるものに問い掛ける。


いつも戦争物を見て思うのだが

軍人も民間人もいい人ばかり死んじゃうんだろうと。

岡田さんがもっと上のえらい人になってれば、戦況ももっと終戦も変わってたんだろうなあと。

でも岡田中将みたいな人に限って出世しないんだろうなって。


そして、その後の戦争でも相変わらず無差別爆撃は続いている。