日本は脱炭素可能?④
前回の続きです。水資源に恵まれているという日本の特徴を活用して経済を支えるにはどのような方法が考えられるでしょうか。
水を使って付加価値の高い商品を開発し、輸出して外貨を稼ぐ。という方向性はいかがでしょう。そのような事例としてまず思い浮かぶのは、ジャパニーズウィスキーの人気です。昨年6月に以下のニュースが報道されました。(NHK News Webから引用)
日本産のウイスキーがアメリカでオークションにかけられ、1本60万ドル、日本円にして8000万円を超える高値で落札されました。
アメリカのオークション大手サザビーズに出品されたのは、サントリースピリッツのシングルモルトウイスキー「山崎55年」で、17日、ニューヨークで競売にかけられた結果、1本60万ドル、日本円にしておよそ8100万円と、予想を10万ドルから20万ドル上回る高値で落札されました。
熟成期間が長く希少価値が高いことから、サザビーズのホームページでは「日本史上、最も価値のあるボトルとして、ジャパニーズウイスキーの頂点に君臨している」と紹介されています。
ネットで検索してみると、日本のウィスキーが非常に高い値段で取引されているようです。高い品質が世界的に評価されており、ブランド化していることがわかります。
お酒のブランド化というと、フランスのワインが頭に浮かびます。フランスはワインのブランド化に成功しました。ソムリエという制度を考えだして、巧妙なストーリーを作り、ワインの価値を上げました。これと似たようなことができないでしょうか。日本には日本オリジナルの清酒である日本酒があります。近年、日本酒の人気が高まりつつあり、輸出量が増えています。財務省の貿易統計を参照して、清酒の輸出額合計と主要輸出先(中国とアメリカ)への輸出額をグラフにしてみました。
これをみると、2015年頃から清酒の輸出が急増していることがわかります。グラフでは中国とアメリカの2カ国のみ折線で表示していますが、それ以外にも多くの国に向けて(70カ国以上)輸出されています。今後、日本酒の人気が上昇し、ブランド化が進めば、フランスのワインのような地位を築くことができるかもしれませんね。
水資源と経済発展、という観点でどうしても触れたい重要な産業があります。半導体です。半導体の製造過程で超水と言われる純度の高い綺麗な水を大量に消費します。非常に小さい半導体を洗浄するにはどうしても超純水を大量に使用せざるを得ないそうです。
世界一の半導体製造メーカーである台湾のTSMCが熊本県菊陽町に進出するというニュースが話題になりました。どうして熊本県が選ばれたのか、その理由の一つが水だそうです。熊本には豊富な地下水があります。阿蘇のカルデラから雨水が染み込んで、熊本に豊かな地下水をもたらしているとのことです。(NHKぶらタモリでもやってました)近年、1990年代、その地下水が減少傾向にあることがわかり、地下水涵養のための取り組みが実施されてきたそうです。「くまもと地下水財団」という組織ができており、この財団を中心として地下水保全のための努力を日々実施しているとのこと。このような熊本県の活動が国連でも評価され、
2013年Water for life UN-water best practice award において、
Best water management practices に選ばれています。
https://www.un.org/waterforlifedecade/winners2013.shtml
半導体産業は今後も成長、拡大が予想される分野です。エネルギー消費量は比較的少ないものの、水を大量に消費する産業であり、かつ、付加価値の高い産業です。これこそ、日本の特徴に合致した産業と言えるのではないでしょうか。
・地球環境問題、脱炭素、省エネルギー化という世界的なトレンド
・国土面積が狭く平野が少ないので自然エネルギーには恵まれていないけれども、水資源は豊かな日本
・少子高齢化により人口、特に労働人口が減少する日本
このような背景を考えると、産業構造を転換し、日本の特徴に合わない(エネルギーを大量消費するような)産業を縮小するとともに、日本の特徴に合った産業で、マーケットが拡大傾向にあり、かつ付加価値の高い産業を伸ばしていくことがこれからの日本の生きる道だと思います。そして、これから2050年までの間にこのような転換を成功させれば、脱炭素が実現するのではないでしょうか。