現在の日本の人口はおよそ1億2千万人ですが、昔からこんなに多かったわけではありません。国土交通省の「国土の長期展望」中間とりまとめ概要(平成23年2月21日)によると以下の通りです。

https://www.mlit.go.jp/common/000135837.pdf

 

1192年 鎌倉幕府成立 757万人

1338年 室町幕府成立 818万人

1603年 江戸幕府成立 1227万人

1868年 明治維新   3330万人

1945年 太平洋戦争終戦 7199万人

2000年        12693万人

となっています。鎌倉時代には750万人ほどで、それから増えていきますが、江戸時代で1200万人をこえたくらい、明治の初めでもまだ3400万人くらいです。資料のグラフを見ると、明治時代から急増し、戦後も増え続け、2004年にピークを迎えたとのことです。推計値では、これから急激に減少することになっています。

 

今や日本の人口が1億人を超えていることが当たり前になっていますが、日本の長い歴史を顧みれば、1億人を超えたのはごく最近のことあり、むしろ現在の人口が過剰で、異常ではないかと思えてきます。日本の国土を考えた時、もし適正な人口規模があるとしたら、それは何人くらいだと思いますか。

 

日本の陸地面積は36,456千ヘクタールです。先進国の中で日本と同じくらいの面積の国を探してみます。総務省統計局の「世界の統計」によると以下の通りです。(単位は千ヘクタール)

       陸地面積  森林面積  森林以外の面積

日本    36,456   24,935  11,521

イタリア  29,414         9,566            19,848

ドイツ 34,886          11,419            23,467

スペイン 49,966      18,572           31,394

フランス 54,756      17,253            37,503

 

上記のように、陸地面積で日本はイタリア、ドイツよりも広いのですが、森林以外の面積では最も狭い国であり、ドイツの半分くらいです。日本は山林が多く、居住に適さない土地が多いので、居住できるエリアの面積で比較すると、およそドイツの半分程度の広さだと考えて良いのではないでしょうか。

 

次に2021年の人口を比較してみます。単位は百万人です。

日本 125.1

イタリア 60.4

ドイツ 83.9

スペイン 46.7

フランス 65.4

となっています。そして、上記の値をそのまま使って森林以外の面積➗人口を計算してみると

日本 11,521 ➗ 125.1  = 92

イタリア 19,848 ➗ 60.4 = 328.6

ドイツ 23,467 ➗ 83.9 = 279.7

スペイン 31,394 ➗ 46.7 = 672.2

フランス 37,503 ➗ 65.4 = 573.4

 

以上のように、ヨーロッパの先進国と比べて日本がかなり過密になっており、人口密度が高いことは明白です。比較的日本と近いドイツと比べても、一人当たりの面積でドイツは日本の3倍くらいあって、かなり余裕があると思われます。このように比較してみると、日本の人口は今の半分以下でも構わないのではないか、と思えてきます。

 

一般に、将来の予測というものは当てにならないものですが、人口に関する予測はかなり正確で、ほぼ当たると考えて問題ありません。前述の「国土の長期展望」中間とりまとめ概要では、2030年の日本の人口は115百万人、2050年95百万人となっており、今から30年後には1億人を下回っていると思われます。

 

日本の人口が減少することは間違いありません。その前提に立って将来を考えた時、何が問題なのでしょうか。何かメリットはないのでしょうか。もし、今の人口規模が理想の姿だとすれば人口減少はまずいことでしょうが、現在は人口過剰なのだと考えれば、これから適正規模に近づいていくのであり、むしろ望ましいとすら言えるでしょう。

 

人口問題や人口構成の推移は経済や社会に大きな影響を与えます。重要な問題なので若い人は関心を持つべきだと思います。老人にとっては30年後など死後の事でありいわば他人事です。しかし若者にとっての30年後はほぼ確実に訪れる未来の出来事です。前述の通り、人口に関する予測は当たります。これから生じることがわかっているのなら準備ができるはずだし、また準備すべきだと思いませんか。不確定な未来について思い悩むのは無駄だと感じますが、はっきりとわかっている事項に関しては、正確な理解に基づきあらかじめ準備するか、無知のままやり過ごして何もしないかで、大きな差が生じるでしょう。

 

人口問題を軸にして、もう少し掘り下げていきたいと思います。