先送りが決定していた鎌倉市七里ガ浜小学校のトイレ改修工事が、生徒からの市長への手紙がきっかけとなり、一転2010年度予算に計上される見通しとなった。

同校は1976年開校。4階建て校舎内に四つある児童用トイレは、大規模な改修が一度も行われていない。壁などが水分を吸収する湿式の材質で、長年の使用で尿などのにおいが染み付き、夏場を中心に悪臭を放っていたという。(神奈川新聞)

 2009 年度に財政難を理由に見送りとなっており、いよいよ来年はと学校関係者は期待していたが、またも見送り事業対象となり、生徒も落胆していたようだが、生徒のひとりが昇降口に常備している「市長への手紙」投函箱の存在を思い出し、市長に手紙を出そうということになった。
生徒からの手紙を受け、市長が学校を視察。生徒をはじめとする学校関係者の思いを汲み改修予算の計上を決めた。

 市長は「簡単に発言を覆して良いものか悩んだ」という。ひとつの「市」を預かる身として、市長の苦悩は察するに余りある。しかしこの決断は正しかったのではないか。連名で手紙を書いた4年生の生徒の発言が物語っている。「約束していたことがまた駄目になって残念だったけど、願いがかなってうれしい。トイレが新しくなったら一生懸命掃除をしてきれいに使いたい」

 みんなが必要とするものをみんなの税金で作ることを決める。そしてそれをみんなで大切に使う。これこそが民主主義の原点である。七里ヶ浜の小学生たちは、トイレの改修と、その後の清掃活動を通じて真の民主主義を学んでいくことだろう。
 一部の者の利益のために一部の者しか使わない道路を作ったり、公共の施設を乱暴に扱ったり、やたらと学校にクレームをつけたり、選挙に行かなかったり・・・この国には国民としての責任を自覚できない輩が多すぎる。大人たちは七里ヶ浜の小学生を見習わなければならない。

 フランス人権宣言から221年。五箇条の御誓文から142年。ヨーロッパと日本の民主主義にはおよそ80年の差がある。そろそろ日本にも「大人の民主主義」が根付いて良い頃だ。そしてそれを成すか成さざるかは、我々大人の意思にかかっているのである。