みなさん、おひさしぶりです、ムラタです。

しばらくご無沙汰してしまいましたが、そうこうする内に「Jersey Boys」、日生劇場公演の折り返しを過ぎました。この前開幕したばかり、と思っていたら、何と残り10公演!

観劇もプログラムもグッズも、お早めに!!

 

さて今日は、1週間ほど前になりますが、10月14日昼の部終演後に行われた、演出家/藤田俊太郎さんと、チームGreen/トミー・デヴィート役の尾上右近さんのトークショーの模様、レポートしたいと思います。

ちょっと長いですが、のんびりお読みいただけると嬉しいです。

 

 

終演後、程なくして、MC役を担ってくれているボブ・クルー役の加藤潤一さんが登場し、藤田さん、右近さんを呼び込んでトークショーが始まりました。

演出家とキャストという貴重な組合せでのトークは、まず、加藤さんの、

「ケンケン(右近さんの愛称)と藤田さんは、2020年のコンサート版『Jersey Boys』から、ですよね。この時、オーディションで初めましてだった?」

という質問から。

藤田さん、演出家である自分の顔を初めてご覧になる方もいると思うので、と、あらためて「演出しております、藤田俊太郎です」と自己紹介された上で、

「今日はこれだけたくさんのお客様に来ていただいて、ホントにありがたいです。トークショー、短い時間になると思いますが…えっと、1時間くらいですか?」

と笑いを誘い、客席の空気が和らぎます。

 

 

藤田「僕とケンケンの出逢いっていうのが、ケンケンは、僕の演出してる作品を結構観に来てくれていたんです。2015年か16年くらい、一緒に食事をする機会を作って下さった方がいて。数人で、舞台観た後に食事する機会が『初めまして』でしたね」

加藤「なるほど。ケンケン、藤田さんの第一印象は?」

右近「えっ? 第一印象?…変わらない方、ですね。
僕は当時、演出家さんにお会いするって機会は全然なくて。歌舞伎の活動しかしてなかった時期に(藤田さんに)めぐり会わせていただいたんですけど、こんなにフランクな、そして、演劇に対して熱い方が演出家さんとしていらっしゃるんだなって。演出家さんっていう存在とお話するのがたぶん、藤田さんが初めてだったんで、そういう意味ではホントに僕は、こうやって『Jersey Boys』にも呼んでいただいてもいますし、恵まれてるな、と思います」

加藤「稽古場でもね、(藤田さんはキャストに)すごくフランクに接してくれて。(そのおかげで)なんかこう、親密に稽古と作品を構築していけたと僕は思ってるんですけど。どうですか、稽古場での藤田さん、どんな感じでした?」

右近「基本的にはやっぱり、演ってみて、っていうことと、そして、面白かったことはもうすぐさま採用されるし。でもこれだけはナシにしましょう、みたいなルールも、嫌な感じにならないようにおっしゃって下さるし。ホントに、作品に対する愛情とみなさんに対する愛情、そして、嫌な思いにさせないようにしようという気持ちをお持ちの方ですね。僕も、そういう風に生きてみたいと思っていて。すごく優しい気持ちをもった演出家、っていう」

加藤「まあ、いろんなタイプの演出家さんがいらっしゃいますからね(笑)」

ここで右近さん、加藤さんに笑いながら、誰とか言った方がいいんじゃないですか?と突っ込み、客席からどっと笑い声が。

 

 

気を取り直して、加藤さん、藤田さんに「どうですか?」を発言を促します。

藤田「ケンケンが “演出家さん” って言ってくれましたけど、(出逢った当時)僕はデビューしてまだ数本だったんで、”演出家さん” なんていうような立場じゃなくて。ホントに出逢った時、フラットだったんで、その関係のまま今もいるんだと思うんですよ。それが先ほどの、稽古場の雰囲気づくりに繋がって来ると思うんですけど。
僕自身は、あまり緊張感は… ”いい” 緊張感をもって稽古場をつくりたいと思っているので、出来るだけゴリさん、あ、ゴリさんって、あの…」

加藤「あ! ゴリさん、です! 加藤潤一、ゴリと呼ばれております! はい(笑)」

藤田「ゴリさんともそうだし、ケンケンとも出来るだけフラットというんですかね ー 演出家が指示を出してモノを創っていくわけじゃないと思ってるんで。もちろん船頭としてね、指針、演出プランはちゃんとみなさんにお渡しするんですが。出来るだけ、稽古場に入ったら楽しく、いろんなアイデアを出したいと思って。そうするとケンケンからね、こんな感じですか? こんなアイデアどうですか?って出てくるし、ゴリさんたち(他のキャストのみなさんから)もね」

加藤「そうですね」

藤田「チームGreenとチームBlack、全然違う発想がわいて来るし。そういう積み重ねで、”これがチームGreen” っていうような稽古が出来たので、とても自由だったと」

加藤「なるほどね」

藤田「まあ、それは、信頼してるから、なんです」

加藤「めちゃくちゃ嬉しい言葉ですね、僕たちにとって」

お客様のあたたかい拍手に場内が満たされます。

 

加藤「ケンケンにとって、チームGreenの印象は?」

右近「一言で言えば、熱くて楽しくて明るい、じゃないですかね。もうホントにみなさん ー それもGreenの4人だけじゃなくて、ゴリさんも、みなさん含めて、でございますけど。

とにかく、花村(想太)さんは、めちゃくちゃ熱いし、優しいし、何か秘めたものをすごく感じるし、その上で現場ですっごい楽しそうだし。癒されてると言うか、そういう姿に僕は元気もらってます。

spiさんはもうとにかくもう、なんかお父さんのような」

加藤「僕から見たら(前々から知っているだけに) “あのspiが(お父さんのようって…)?!” って(笑)」

右近「(笑)。正直、ちょっとしか年がね(離れてないんですけど)…5つですか」

加藤「はい」

右近「だけどもうホントに、すごさを、舞台上で感じる方です。

(有澤)樟太郎くんは、とにかく飛び込んで気持ちの強さを感じる。年下っていう存在 ー 僕は今まで自分が一番年下みたいなことが多かったんですけど、(今回のように)年下の俳優さんと一緒っていうのも初めての経験だったり。

まあ、ミュージカル、歌いながらの芝居が初めてみたいなとこがありますし、この現場で、すごく、いろいろ稽古しなきゃいけないことだったり、おっかない思いを感じた瞬間もたくさんありましたし、本番中も思いますけど、とにかくこのメンバーに恵まれたことが、また僕は “ついてるな” って思います。うん、感謝しかないですね、ほんとに(客席から拍手)」

 

加藤「藤田さん、それを見られて、どう思われますか?」

藤田「そうですね、僕は、尾上右近さんという俳優について、この『Jersey Boys』という座組みに入ってもらって一緒に作品を創っていく中で、どういう風な印象かというと “外国人” なんですよ」

加藤「外国人?」

藤田「僕の演出において(作品の中には)”いろんな国の人がいる” っていう説明をしたことがあるんですけれども、ケンケンはこの座組にとっての “外国人” になってて。で、どういう外国人かというと、非常に優秀なクリエイティブな気持ちと身体と表現力をもった外国人、と思っています。僕は、歌舞伎というもの、歌舞伎俳優に対して畏敬の念を持っていて。それくらい、違う身体と表現力を持った方々なんだと思っているんですね。

その外国人がこの座組に飛び込んだ時に、その外国人が浮いてしまうのかというと全然そんなことはなくて。ケンケンという俳優が飛び込んだ時に、みんなそれぞれの個性が爆発していった、と僕は思うんですよ。で、実は、外国人は1人だけじゃなくて、みんな外国人なんだ、っていうふうに思わせてくれたのが、ケンケンの芝居なんじゃないかなって思うんですよね。

spiさんはもちろん、想太さん、樟太郎くんって、それぞれ出自が違っていて、個性が際立っているんですけれども、僕は、右近さんがこうやって入った時に、

”ああ、何だ。それぞれ違った作品での身体の表現力を持っているんだ”

って思わせてくれたんじゃないかなと思います。そうすると、その4人だけじゃなくて、ゴリさんもそうですけどみんなが、自分の国や出自やルーツを持ちながら集ってくるっていう。歌舞伎から来た右近さんが、それを気付かせてくれたんじゃないかなって。

だから(Greenが)どういうチームになったかというと、非常にクリエイティブで、多様性に富んだチームが出来たんじゃないかなと思います。とても美しいハーモニーをね、作ることもこの作品は大事ですけれども、ハーモニーだけじゃなくて、このチームの芝居のテイストというか、多様な価値観を持ったチームになった、もちろんそれは(加藤さん演じるボブ・)クルーも含めて、16人のキャスト全員に言えることではないかな、と思います。右近さん1人入ったことだけではないですけど、多様性にとんだ新しいチームになっていると僕は思います」

加藤「チームによって、”ボブ・クルー” も全然違うんですよ。演ってて楽しい。右近さん、”外国人” っていうのはどう?」

右近「いやぁ、そうですね、(表現が)”和” になっちゃってるって現象が自分でどういうことだかわかんないので。

[ムラタ註:稽古中、右近さんの表現が “イタリア系アメリカ人” というより “和モノ” に傾くことがあり、都度スタッフから指摘されていたことを受けての発言です]

基本的には、舞台に出る時の考え方がどうしても、やっぱり歌舞伎っぽいんですかね? (自分では)それ、わかんないんですけど(苦笑)」

藤田「そうですよね(苦笑)」

右近「それを僕、気付いてない、気付かないうちに、藤田さんにたぶん 活かされてたんだと思うんですよ」

加藤「あぁ、自分の特質を?」

右近「そうです、そうです! でも、全然違うモノだと思ってたんで。歌舞伎で自分が経験してきたことがどういう形で通用するのかって考えると、もう、何にもないとこからスタートなんじゃないかな、って思っちゃうタイプなんですよ。非常に内弁慶的と言いますか、性格が。

やっぱり歌舞伎っぽいところはあるなとか、外国人に見えるような何か異質な存在みたいなところはあるんだな、っていうのを自分では自覚してないので、それを言っていただいて、活かしていただいてるなんてお話を聞くと、”あぁ、そうなんだ” って。やっぱり、自覚がないタイプかもしれないです(笑)」

加藤「(笑) 自分やって(るつもり)ない、と?」

右近「これ出そう、って。これは歌舞伎っぽくやった方が楽だから、とかって思ったことは一度もないので」

藤田「僕、ノート(いわゆるダメ出し)で、ここはニュージャージーで、とか、ここは60年代のスターです、っていう風に言っていて、演者の身体の中で、ここは今までの自分の身体を活かすことが出来るっていう箇所と、もう全く新しい身体を手に入れなきゃいけないっていう、両方が混在していて。その時に一緒に創っていくっていうのが大事で、そうあるべきだと思っていて。だから、ケンケンとだけでもいろいろな隠し味が、この作品を通して生まれていたとするなら、絶対僕は幸せだったし、ひょっとしたら(ケンケンも)幸せなんじゃないなかって」

右近「はい! いやもうホント、心からそう思ってます!」

 

ここで、ものすごく絶妙なタイミングで、開始15分を告げる ♪ Oh What a Night! の曲が流れてきました。

終わりの時間が迫っていることが加藤さんより告げられ、最後に「Jersey Boysを愛するみなさんに一言」ずつ、となったのですが、藤田さん、お客様アンケートに質問を…云々と冗談を言いはじめ、思わず加藤さん、「藤田! おふざけがすぎるぞ!」とツッコミ。これに藤田さんが、「じゃあ、ゴリさんから一言」と返して、「え? 僕ですか?」と台本にない流れに加藤さんが言葉に詰まる場面が。こういう気取らない雰囲気も、キャストとバンド・スタッフの “距離” が近い「Jersey Boys」カンパニーならではです。

 

加藤「本日はトークショーまで残っていただいて、ありがとうございました。まだまだこの作品、どんどんと進化していく ー まあ、僕も初めて(の本編出演)だし、(他にも)初めての人いますし ー たくさんの感動をどんどん、どんどん、これから先も積み重ねていけると思います。日生劇場・地方とありますので、是非また観に来ていただけたらな、とボブ・クルー的には思います。よろしくおねがいします。はいっ、じゃあ!(と藤田さんにバトンタッチ)」

藤田「僕はホント、一言だけで。えっと、僕はホントに…」

と言いながら、何やらごそごそと取り出す藤田さん。その手には何と、”ケンケンカレー”[ムラタ註:カレー好きが高じてケンケンさんが作ってしまったレトルトカレー]が! このサプライズには、「仕込んでるなー!」と漏らす加藤さん・右近さんはもちろん、お客様も大爆笑です。

藤田「いやもうホントに、ホントに一言だけです。栄寿太夫[ムラタ註:右近さんの清元節でのお名前:七代目清元栄寿太夫]さんであり、右近さんであり、そして、カレーアーティストとしても」

右近・加藤「はははっ!(笑、客席も笑)」

藤田「ホントにこの、ケンケンカレーというのがロビーで売っておりますので、お帰りに是非、ケンケンカレーを買って、お帰り下さい」

客席、再び大爆笑です。

 

ネタはここまで。藤田さん、最後に、

「このご時世の中でね、劇場にチケットを握りしめて来て下さることがどれほど大変なことが、演出家としてよく解っているつもりでございます。みなさまが、私たち作品を作っている演劇人を支えて下さっているので、この場をお借りして、ホントに、感謝申し上げます。本当にありがとうございます」

続いて、右近さん、

「先ほどもちらっとお話ししたように、ミュージカル、なかなか経験ない中での今回の『Jersey Boys』で、ホントに、飛び込ませていただいて良かったなって日々実感しています。

歌舞伎の世界で僕は、”人と人” だって胸に刻みながら舞台に出ていて。人を喜ばせたいって思って人生を送っているわけですけども、そんな中で歌舞伎ではない舞台もやっぱり ”人と人” なんだってことを、実感させてもらってるのがホントにありがたいな、と。そして、お客様を喜ばせたい、そこが根本なんだって、あらためて『Jersey Boys』で実感してます。

どんどん人を喜ばせたい、人と人との想いってものを自分の中でふくらませて、たくさんの人を喜ばせる人間になりたいなと思ってますので、これからもよろしくお願いします!」

 

そんなこんなで、20分弱の終演後トークショー、終了、となりました。

 

  トークショー終了後に

  左から演出/藤田さん、トミー/右近さん、MCのボブ・クルー/加藤さん

 

 

長いレポート、最後までお付き合いありがとうございました!

 

次は、たぶんまた長くなりますが(苦笑)、10月18日昼の部終演後のWフランキー・トークショー(2回目)の模様をお届けしようと思います。

ではまた、次回!!