179. 2013 みちのくジャズ喫茶行脚 2 | BACKUP 2024

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備忘録

 

 

 

翌朝妻が「あまちゃん」を見終わるや、東北自動車道を南下する。
地元ナンバーの外車率が低い。そして軽自動車率が高い。理由は様々あろうが、東北は一歩裏道に入り込むと恐ろしく道が狭いのである。車一台通過出来るか、という道の向こうから対向車が普通にやってくる。でかい車に乗っていられるものではない。
この日は朝から30度近かった。走ること約2時間、岩手県の県庁所在地盛岡に到着する。歴史ある城下町盛岡。今回一番の都会でもあった。

 

 

 

 

 

 

この日最初の店「ノンク・トンク」は郊外型ジャズ喫茶だ。このコンセプトに無理がないか気になるところだ。お客は入っているだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

それを確認すること叶わず。
メゲることなく次の店を目指す。盛岡中心部の「ダンテ」。私が車で待つ間に妻が様子を見に行く。12時開店の情報ゲット。
近くの駐車場に車を入れ、街を探検する。何か食べよう、ということになった。それなら「盛岡冷麺」でしょう。意見一致で店を探す。だが盛岡冷麺、香川における「さぬきうどん」や札幌の「札幌ラーメン」とは様子が違う。店が見当たらないのだ。
チラシ配布中の地元民をつかまえて店を教えてもらう。私の地元の「盛岡冷麺」と同様、本場でも冷麺は焼き肉とセットなのである。単独の「冷麺屋」は存在しないとのこと。

さあ、おなかもいっぱいになったし、ジャズを聴こう。

 

 

 

 

 

 

ここの特徴はとにかく店内のとっちらかりようだ。音は悪くない。中域の充実した、オーディオ的ではないがジャズらしい音がする。そのジャズらしい音で「ダイナ・ワシントン DAINAH JAMS 」など聴かせて頂いた。それはいいのだが、店内を少し整頓されてはいかがだろう。スピーカーの周りがワインのダンボールだとか、スズランテープで縛ったレコードプレーヤーだとか本だとかで、もうごちゃごちゃである。A型の私は気になって仕方がない。

 

 

 

 

 

 

この店もご夫婦二人でやっておられた。
恐らく人件費まで稼ぐだけの来客はないものと推察する。

 

 

 

 

 

 

いよいよベイシーに向かい東北自動車道を更に南下。
盛岡から一関まで約一時間の道のりである。はたしてベイシー、開いているか?一関ICを降り、何はともあれ現地を確認する。

 

 

 

 

 

 

あった。
地味な住宅街の中にこつ然と姿を現すベイシー。初めて行った人は大概驚くだろう。そもそも一関は「市」だが田舎だ。そしてベイシー、ほんと普通の住宅街にある。

 

 

 

 

 

 

 

開いているのだろうか。
そっと様子をうかがう。何の音楽も一切漏れては来ない。もう一歩肉迫する。ドアのガラス越しに明かりが見えた。私は車で待つ妻に駆け寄り報告した。その時彼女の目がこう言って私を責めた。「何でドアを開けて確認しないの?」だが私に出来るのはここまでだった。それ以上はとても出来ない。

 

 

 

ベイシーの屋根。歪んでいるのがわかる。地震の影響か、それとも経年劣化か。

 

 

 

取り敢えずホテルにチェックインし徒歩で出直すことにした。車を置いて来ればビールだって飲めるじゃないか。ホテルとベイシーは案外近い。20分かからないのではなかろうか。気温が30度以上あるけれど・・・
 

シャワーで汗を流し、再びベイシーへ。遠いような近いような微妙な距離だ。だが、歩かなければ分からない事もある。一関の民家は窓ガラスが単板で二重サッシにもなっていない。冬の寒さはたいしたものではなさそうだ。途中に市の庁舎があった。一関は本当に何の変哲もない田舎町だ。もしもベイシーがなかったら、一生ここに来る事などなかっただろう。

殺風景な磐井川に掛かる「いわい橋」を渡れば、ベイシーはすぐそこだ。本当に開いているのか?お盆だぞ。中で何か作業してただけじゃないのか?不安になってくる。角を曲がるとベイシーが見えた。中から黒っぽい服装の人が出てきた。
(じぇじぇじぇっ!)
それが菅原さんだと、すぐにわかった。くわえ煙草で外の照明を点け、また店の中へ入っていく菅原マスター。ドアに近寄ると、今度こそ店内からジャズ以外の何物でもない音楽が聞こえてきた。どうやらベイシーはこの日、本当に営業しているらしかった。