初めて包丁をもつ息子が、
家庭科の実習を前に
練習を申し出た。

じゃがいもの皮むきである。

いきなりじゃがいもは、
ハードルが高い。
でこぼこと固さとで、
人生初めてのときに剥くものじゃない。

それで、リンゴの八分の一皮付きの
皮を剥いてみろというところから始めた。
それでも、要領を得ないというのは仕方がなく、
ちょっとやって「見せた」ところで、
包丁を渡されたとたんにできるというものではない。

それは、スキルだ。
自分の体の感覚でつかむものだ。
理屈で、頭だけで実感することはできない。
力のちょっとした入れ具合、角度、
手応えなどは、からだで理解するものだ。

皮を剥くという言葉もよくない。
息子は、ちょん、と皮をめくろうとした。
違う。それじゃ、危ない。

皮と実とを分離するべく、
ぐいと切り込むのだ。
切り入れて後、そのまま皮を削ぐ。
その力の入れ具合などを、体感していくしかない。

思えば、
この息子、ペットボトルのキャップが開けられなかった。
小学校中学年でもだめだった。
要領というか、力の入れ具合は、
理屈だけでは伝えられない。
失敗を重ねながら、実感するしかない。

指を切らないうちに、とやめさせたが、
それなりにうれしかったようで、
昂奮しているようすが分かった。

理屈で説明できない、この力の入れ具合。
なんにしても、あることなんだと改めて思う。