たとえば老齢ドライバーの、
ブレーキとアクセルの踏み間違い。
若年層に比べると、
蓋然性の高い事故だと言えるだろう。
これをやってしまったとしても、
事故を回避できるか、被害を小さくできる。

そうした願いをこめて、
衝突被害軽減ブレーキが開発されている。

安全が目的であるということで、
それはそれで好ましいことであるとは思う。

だが、万人にとり安全かどうかは分からない。
「だったらスマホしながら運転してもいいじゃん」
という心理を助長することは必至だと思うのだ。

ただでさえ、ケータイやスマホの運転が
平然となされている現状である。
マンガをハンドルに広げて読んでいるドライバーもいるのだ。
歩きながらスマホをしている人間が、
本人だけはぶつからないと思いながらも、
明らかにこいつはスマホをしていると分かるほど
ふらふらしたり周囲に無関心で危ないものであるかは、
少し後ろを歩けば明らかである。
事実、報道などされないが事故やトラブルは多数起こっている。
これだけ、危険だと言われても、である。

衝突被害軽減ブレーキは、
その善意の趣旨とは裏腹に、
ますます道路での危険性を増すことに、
今のままでは、加担してしまうであろう。

人間の罪たるものは、
あらゆる善意志を黒く塗り替えるほどである。

自動車メーカーは、
これをしないと安全へ配慮していないと評価されるため、
競って取り入れ、また宣伝している。
ただ、コストが価格に乗ることもあって、
作る側としては頭の痛いところでもある。

トヨタほどの最大企業が、
実際このシステムについては消極的に見えるのは、
一部の非難を浴びてもいるが、
私はたしかに、このシステムを派手に宣伝するのは
どうだろうか、という姿勢をもつ立場にあるので、
トヨタの構え方には今のところ賛同を示したい。
今後どうしていくかは見えてこないのだが。

他のメーカーでよくあるように、
衝突が回避できるようなイメージを与えてでも、
このシステムを強調して、売上げを増やそうとする、
そういう宣伝も、ある意味で仕方がない。
しかし、
せめて、このブレーキシステムの根本に
ここから出発するべく掲げおかねばなるまい。
衝突を回避できるブレーキではない、と。