「はだしのゲン」騒動は、
新聞社をして、
真っ二つに分けている。
 
いま、閲覧制限はまずかった、と
撤回する動きになっているが、
それでよかったと繰り返す新聞もあれば、
なんたることか、こんな危険思想を
子どもに見せてはいけないので撤回するな、と
強い姿勢を見せる新聞もある。
 
概して前者の新聞は、
論敵に対して、
「あなたがそのように考える自由は奪わないが、
 あなたが考えるような世の中になることには反対だ」
という姿勢をもっているように見える。
概して後者の新聞は、
論敵に対して、
「あなたがそのように考えることは間違っている。
 そのように考えること自体許されない」
という態度で論じているように見える。
 
この姿勢は、ゲンの問題に限らない。
自由主義という理念は、前者の中にある。
後者が、全体主義の基本であることを、
私たちは学んでいる。
 
かの問題の落ち着いたところは、前者であった。
自由主義を保った上で、
受け止めるそれぞれに任せる、というものだった。
だから、マンガに詳しい政治家は、
思想的には後者のような立場をもつ政党にいても、
表現や言論の自由を尊重するように考えてもいるらしい。
 
取り締まり禁ずるならば、
よくないものは世にいくらでもある。
「ゲン」を持ち出したのは、明らかに、
思想的な背景である。
これが自由のほうに傾いて落ち着こうとしているのはよかったが、
おかげで、それに反対する勢力もまた
いくらかはっきりしたという副産物も得た。
 
(続く)