ただ、こういう場合、オトナであれば、
説明の仕方がよろしくありませんでした、と
一言最初に言って、その場はたいてい治まることを知っている。
最初に、クレーマーの言い分を一度認める、それが鉄則である。
いきなりクレーマーの言うことが嘘だ、と突きつけ、
それに固執するのは、受ける側の姿勢としては最低である。
彼はこうした知恵がなかった。
それで私は、諭すように教えた。
 
――最初からずっと最後まで、
  「おまえは嘘つきだ」と私に言い続けているが、
  それでよいのですか。
まだしばらく気づかなかったが、さすがに、
私の首尾一貫した言い方に
これ以上荒立ててはまずいと思ったのか、
彼は肩を振るわせながら、
自分の口のききかたを詫びた。
公営の場所である。
民間ではありえない態度であろう。
 
そして、泳ぎの練習ができないという私の
最初の点について改めて尋ねたが、
結局彼はこのように言うことになった。
相当頭に来ていたのだろう。
「ここは『公共の場所』ですから、
 泳ぎの練習をしたいならば、
 他のプールに行ってください」
 
彼が言ったのは、要するに、
公共のプールでは、
泳ぎの練習をすることはできない、
ということであった。
 
プールというのは、泳ぐところではないのか、という
私からの問いかけは、まるで伝わらなかった。
水遊びをしてはならない、などと言うつもりはない。
十分してよい。
だが、泳ぎたい子どもたちのために
十分の一でも場所がつくれないものなのか、と
言ってみたのだが、
公共の場所だから泳ぎの練習はできない、という意味のことを
彼は繰り返した。
何かそこにおかしさを少しでも感じてもらいたかったのだが、
無理だったようだ。
 
「あんたはもう来るな」という意味で、
泳ぎたいならば他のプールへ、
と彼が言った可能性が高いが、
(なぜならば、「泳ぐ練習をしている人はいますよ、
 実際に上から見てください」と彼は先に私に言った)
だとすれば、「公」の施設からの発言としては、
もはや論外であろう。
 
福島の原発事故に関する東電の態度に
多くの人が怒りを覚えている。
しかし、私は悲観的に申し上げる。
公的な施設はすべからく、
このような発想をし、態度をとるものなのだ。
東電に「改心」を求めるのは、不可能であろう、と。