作文の教材がある。
小学生に取り組みやすいように、
文章を書くためのノウハウを
自然と身につけることができるような教材だ。
 
なかなかよくできていると思う。
 
もちろん、一朝一夕に
文章というものが書けるわけがない。
こういうことを続けていれば、
文章が思うように書けるようになる、という
ひとつのモデルを体験するに過ぎない。
 
自分の最近の出来事を
以前習った先生や親戚の人に伝える手紙を書こう。
これが今回ひとつの練習だった。
 
中学年の非常にテストの点のよいクラスの子だったが、
「書く相手がおらん」と口々に言う。
「○○に書いてもよいですか」と許可を逐一求める。
説明に書いてあることからの類推ができない。
ついに、お母さんに書く、という子が現れた。
お母さんが遠くに離れて住んでいるのか、と
私は思わず案じて小声で尋ねたが、そうではないらしかった。
 
さらに、「別に出来事なんかない」
「何も書くことがない」と考え込む子が続出。
 
そもそも、「手紙」という概念が皆無である。
しかしそれにも増して、
自分のことを誰かに知らせよう、という
うきうきした感情がまるでないことが、私は悲しかった。
 
(続く)