鹿児島県阿久根市。
思い出す方もおられるだろう。
世間はもう忘れてしまっている。
その時だけの話題に役立ったものでしかなく、
もはや自分とは関係がない、というかのように。
 
T市長の発言が、
連日さかんに取り沙汰された。
ワイドショーが取り上げると、
巷の話題になりやすい。
政治的なニュースも、
たんにいろいろ噂にする材料となってゆく。
 
ブログで突拍子もないことを言ったり、
気に入らない反対派の議員を止めさせるために
法の境界線あたりで
まあ普通はやらないような手段で行動した。
相手からすれば、嫌がらせのように見えた。
 
「専決処分」という、聞き慣れない政治用語を
一般に知らせたのは、この市長である。
それは地方自治を独裁でやることの宣言であった。
いわば自分が議会を開かせないでおいて、
議会が開かない間は市長がひとりで決められる、というふうに
制度を用いたようなものだった。
 
裁判所も神ではないから従う必要はない、と言った。
裁判の結果も、その裁判官の個人的な判断だから
自分は従う必要がない、と言って涼しい顔をしていた。
障害者などの思いを踏みにじる発言もあった。
 
いつだったか、覚えておいでだろうか。
まだあれから、二年も経っていないのだ。
いや、最後の市長選で敗れて
表舞台から消えたのは、
2011年の1月半ば、去年のことなのだった。
 
震災が、その記憶の距離を遠くしているとはいえ、
あまりにもその教訓は活きていない。
もしも今T氏が、同じことをしたら、
もしかすると社会に受け容れられたのではないかとさえ思う。
今は、そういうことがまかり通る時代である。
阿久根市長を批判した人が、
類似した行為を熱烈に支持している。
 
あのころは、まだ社会正義が生きていた。
T氏は、現れるのが少しだけ早すぎた。