長男が、
独り暮らしをすることになった。
 
世間知らずではあるが、
自分なりによく考えて、調べて、
荒波に立ち向かうようにして、
部屋を探した。
 
慎重な息子のことなので、
やると決めたからには頑張るようにと
陰から応援することで十分だと思った。
 
ただ、ぎりぎりではあるが、未成年である。
あと少し待てばまだ契約のほうも
いくらか役立ったことだろうが、
まあ時があるので仕方ない。
 
私が独り暮らしをするときには、
契約は殆ど口約束に等しかった。
今はそういうわけにはゆくまい。
 
「どうして契約書は二通あるんですか?」
彼が担当者にこんな質問を寄越したとき、
隣の私はこけそうになった。
 
だが、分からないことを
ひとつひとつ質問する姿勢は
買ってやってよいと思った。
 
大量の契約書などの書類。
とにかく、印鑑を押すところが多い。
 
ハンコの押し方がうまくなる、と
冗談の一つでも言ってやりたいものだが、
本当に署名・捺印の多いこと、多いこと。
 
こうして、契約の重みを知ることで、
人は社会人となってゆくのかもしれない。