「ホームが傾斜しています。ご注意下さい」
駅のホームの床に書いてあるのを見かけた。
車椅子が傾斜に気づかず
ホームから転落する事故が相次いだために
記すよう通達が降りたのだろう。
結構なことだ。
だが、この表示を必要としている人の一部には、
この情報が伝わらないのではないか、という思いも走った。
恰も、ちゃんと配慮はしたのだから事故の責任は負わないぞ、と
予防線を張るためだけの、嫌々ながらの自己保身のための措置であるかのように。
まずは、子ども。
漢字が、読めない。
せめてひらがなか、ふりがなの配慮はなかったか。
それから、視覚障碍者。
ホームの傾斜に命を奪われる可能性があるとすれば、
見えない人もそうではないのか。
しかし、彼らにはこの注意書きが読めない。
駅のアナウンスは、えてしてうるさく無意味なものが多いのだが、
こういうアナウンスは、うるさくてもいい。
人の命を守る可能性のあるものならば、
こういう情報をこそ、アナウンスすべきではないのだろうか。
ところが、延々と繰り返されるのは、たとえばこんなアナウンスだ。
「ホームの一部に喫煙箇所を設けております。
お客様にはご迷惑をおかけしますが、
喫煙は喫煙コーナーでお願いします」
これは、実は終日繰り返されているアナウンスである。
冗談じゃない、と思う。
私はそうだが、多くの客と、子どもと、喘息を患う乗客は、
ホームで傍若無人にタバコを吸われもうもうと煙をまかれることに
非常に迷惑している。
時に命の危険を覚え、一ヶ月の重症を覚悟で電車を待たなければならない。
ところが、JRが一日中アナウンスしていることは、
タバコを吸う人には迷惑をかけますが喫煙所で吸ってください、
ということである。
しかも、たんに「お客様にはご迷惑をおかけしますが」ときている。
子どもも、喘息患者も、お客様ではないのである。
こうした人は、タバコが自由自在に吸われないことに、
ようやく安堵の息を漏らしているというのに、
煙が蔓延しないことが、「お客様にご迷惑をおかけしている」
と表現されているのである。
正当に表現すれば、
「ニコチン中毒の方は、一般のお客様の迷惑になりますので、
どうしても禁断症状のために吸わなければ発狂しそうな場合には、
仕方ないので特別にサービスで設置しました喫煙所でタバコを吸ってください」
であろう。
そうであるべきことは、
「車内で酒を飲みたいお客様にはご迷惑をおかけしますが、
電車を降りてから飲まれるようにお願い致します」とか、
「車内で花火をしたくなったお客様にはご迷惑をおかけしますが、
駅の外の安全な場所でお願い致します」とか
そんなアナウンスが実に馬鹿げていることと比較するとよい。
迷惑をかけているのが当人である場合には、
その当人に配慮することはありえない。
他の善良な人々を敵に回すような真似は、通常しないはずである。
だが、JRはそういうことをやっている。
実に不思議だ。
他人に危害を与えてまで自分の欲望を公共の場で満たそうとするのは、
セルフコントロールの利かない薬物中毒患者である。
しかしJRが「ご迷惑をおかけするお客様」とは、そうした人々のことであり、
全うな乗客は、「お客様」ではないのである。
誰のための、アドバイスなのか。
自分が、ちゃんと義務は果たしました、と
責任逃れをするためだけの、ダミーではないのか。
ホームが傾斜していることが危険であるのなら、
そのことを真剣に危険だと通知しなさい。
そして、「お客様」とは誰のことであり、
迷惑をかける困った存在が誰のことであるのか、
少しは見分ける目を育てたらいい。
へたをすると、最近は、
「どこでも喫煙者は煙たがられて……」などと
喫煙者が被害者であるような顔をしている。
冗談じゃない。
どこででも煙を発生させて、その煙を吸わされて、
一ヶ月肺が元に戻らない、喘息を患う子どもとその親の気持ちを、
分かれなどとは言わないが、
そういう事実を、せめて否定はしないがいい。
間違いなく、喫煙者は、加害者なのである。