『僕はパパを殺すことに決めた』という本を読んだ。
衝撃的な本であった。
普通なら、入手不可能な資料が公開されていたからだ。

少年事件の内容については、
密室の奥に隠されたままで、
外部に出てくることがない。
それが、この事件に限っては、
ルポされていたのだ。

ジャーナリストの草薙厚子氏と
出版社の講談社の勇気にも恐れ入ったが、
さて当人や関係者は厳しいものがあるだろうとの予測も立った。
とくに父親は、殆どこの事件の原因は父親にある、と
言われているようなものであった。

昨日、
奈良地検が、刑法の秘密漏示容疑で強制捜査に出た。
鑑定医が、秘密漏洩をしたとの見解であった。
少年が保護された京都の地――そこは私のかつての勤務地のそばだった――の
病院などがテレビ画面に大きく映った。

法的にこれまで守ってきた、少年犯罪についての秘密が暴かれたのだから、
法が敏感にこれを察知し、食い止めようとするのも尤もだろうと思う。
と同時に、
私たちにどうすればよいかを具体的に提供してくれた
出版や言論の立場も、大切な何かを含んでいると理解できる。

個人と社会という問題は、
大学の小論文にとって恰好の題材だが、
私たちの毎日の中に
つねに隣り合わせになっている問題だということを、
改めて痛感する。

私はさしあたり、
この事件の犠牲者とその関係者の立場から
(完全にそこに立っていくことは不可能ではあっても)
事態を見つめてみたいと考えている。