クワガタムシの好きな、四年生の男の子。
多くの種類を捕まえ、飼い育ててきたという。

私はカタツムリを飼ったことがある。
飼って初めて分かるということがある。
逆に言えば、
そうまでしてつきあわなければ、
生き物は分からないとも言える。

だから、この男の子の
クワガタムシへの愛情には敬意を払った。

彼は、どのクワガタムシに挟まれたときが一番痛いか、
そんなことまで知っていた。
よい経験をしていると感心した。

彼に尋ねた。
クワガタムシを育てるとして、
どんなところに注意すればよいか。

言葉を換えて言えば、生きる力のあるクワガタムシは
どんな点が違うのか。

もちろん、個性はある、と彼は答えた。
その上で、彼はきっぱりと言った。
生まれ育った環境と似た条件で育てたものだ、と。

たとえば、
涼しい地域で生まれたクワガタムシを捕まえて販売ルートにのせ、
暑い九州で売って買ったとしても、
どうしても弱ってしまいやすい、ということである。

当たり前のことだとは思ったが、
言われて初めて気づいたことだと私は思った。

私たち人間は経済を考える。
経済は基本的に、等値交換の原則に立っている。
しかし、生き物について、人間の目から見て、等値だと考えても
そうではなかったのだ。

ムシが欲しい。
ムシは買うもの。
買えば、飼える。

それでいいのか。

クワガタムシを愛する少年に、
たくさんのことを教えられた。