図書館で、大きな声でしゃべる男性二人がいた。
図書館員は何の注意もしようとしない。
以前、図書館でかかってきたPHSで、留守番録音をただ黙って聞いていただけの私は、
話さないでくれ、と即座に、ずいぶんきつい言い方で注意を受けたことがあるが、
大声で話し続けるのは、差し支えないのだろうか。

それはともかく、
やがて別れた二人のうちの一人が、
ヘッドフォンでビデオを見ている小さな子どもたちのところに来て、
にやにやと、画面のトムとジェリーを見ていた。
そして時間の三分の一ほどは、その女の子たちの顔のほうに目をやっているのだった。

そのとき、Jr.3もそばにいて、ヘッドフォンなしで見ていたので、
気が気でなかったのだが、
どうにも様子が変である。怪しい。

本を読んでいるとか、探しているとかいうふうは、少しも見られない様子なのだ。
私は図書館を出て行きながら、振り返ってみたが、
先ほどは「帰る」と言っていたにも拘わらず、
また図書館の奥の方に戻っていく様子が見えた。
繰り返すが、本を読むとか借りるとかいう雰囲気は、
最初から最後まで全く感じなかった。

これぞ、かの有名な「不審者」というものであろうか。

その前日も、公園で、タバコを片手に、
何をするということもなくうろうろしている男がいた。
公園に来ている子どもを品定めしていると受け取られても仕方のないような、
視線と動きであった。

公園を出て行くふうでありつつ、また入ってきて、
一周して、また中を往復する、などというふうに。
そして、子どものいる方をじろじろ見たりするのである。
何か理解可能な他の目的があるようには、見えなかった。

ここのところ、地域で不審者が続出している。
実は、このマンションの近くの交差点や、マンション内でも、
不審者情報があった。

「不審者に気をつけてください」
と、さかんに書かれている。
だが、これでは不安だけが増える。
そもそも「不審者」とは、どんな奴なのだろうか。
私など、昼間にうろうろしているいい歳の男であって、
不審者に見られても仕方がないことがあるかもしれない。
いつもメモ帳に何かを書き付けているし、
空の雲をぼうっと見ていることもある。
不審だと思われても、返す言葉がない。

「不審者に注意」
そう呼びかけるからには、せめて、目撃された不審者の特徴を、
可能な限り明らかにしてほしい。
もちろん、人違いということで、プライバシーに関わることが、あるかもしれない。
特定の職業の服装をしていたということで、
その職業の真面目な人に迷惑がかかる可能性もあるだろう。

しかし、とにかくこういった者が怪しいと見られた、という情報がなければ、
我々は、何をもって「不審」と考えてよいのか、分からない。
何を、警戒すればよいのか、分からない。

そういえば、どこぞでこんな看板を見つけた。
「痴漢を見たら、110番」
これは、痴漢をしている現場を見たら、通報せよ、という意味だろうか。
そんなことくらい、言われなくても分かっている。
痴漢らしい人物を見たら、という意味だろうか。
いったい、誰が「痴漢」なのだろうか。