学生の内定取り消しが大きな問題となっている。
企業の対応の中には悪質な事例もあり、
また、何より当の若者の落胆や不安を思うと、
実に憂慮すべき事態だと思う。

だが、そうした義をすべてさしおいても、
ひとつ視点を提供したいと考えてみる。

そもそも、どうしてそんなに早く「内定」を出すのか。

今年のように経済状況の急激な変化の中では、
企業も苦しくなるのは必至である。
しかし、採用を、大学三年頃から内定など示しておくと、
当然それをまともに受け容れられないという事態にもなりかねない。
極端に言うと、
会社自体が消滅することだって、ありうるのだ。

いわゆる青田買いなどの問題を含め、
よい社員を早く囲い込みたいという事情も察知する。
それにしても、
あまりにも、の先物取引である。

基本的にまだ家族を抱えているわけではない学生の側も、
まだやり直しが利く。
「社長が土下座しろ」とか「慰謝料を寄こせ」とか
そんなことを言う声もあるが、残念ながら、
まだ一つも働いていない学生が言うような立場ではないのではないか。
長い間会社に血と汗を流して働いてきた人が、
家族を抱えながら突然切られたときになら、
それは叫ばなければならない言葉であるかもしれないけれども。

若い人の力を信じるから、言うのである。
レールをまだ走ってもいないうちに、
敷かれたレールがなくなったからもう絶望だ、などと
エネルギーのないことばかり言って欲しくはない。
その会社は、あなたを採用すると、会社が潰れるかもしれないのだ。
まだあなたには可能性がある。
決めたとおりにうまくゆかないことは、
これからいくらでもあるだろう。
厳しい風の中ではあるが、どんな形でも船出は可能だ。

それとも、
思い描いたエリート路線でなければ、
あなたはもう生きる意味もない、などと思うのだろうか。

中には、貧しい家庭を支えるために
苦学してようやく就職を迎えたのに、という人もいるだろう。
そうした人の場合は、本当に憤りが先立つ。
だから、
会社の応対が正しい、などと言うつもりはさらさらない。
約束というものを破ってよいなどとは、私は考えない。
ただ、若い皆さんに対して、そこに拘泥するばかりでいるよりは、
あなたの未来をなんとかあなたが掴んでいってほしい、と願うのだ。