かつて、「自己欺瞞」という言葉があった。
今は、誰もそんな言葉を使わない。
そういう考え方が、死滅したのだ。

自分を欺く、という
自省あるいは内省の視点が、消え失せてしまったのだ。

他人を欺くことが残るだけ。
どんなことをしても、自分を欺くというふうには考えない。
それはつまり、良心の呵責というレベルのものが
すでに存在しなくなっていることをも表す。

自己欺瞞は、死ぬまでその後悔が離れることがない、
自分のことは自分から離れることができないのだ。
そんな脅しも、すでに利かない。

人はもう自己の内面に深く潜り込もうなどとは考えない。
せいぜい、「本当の自分」を知りたいと思うだけだ。
自分の根っこが何か、そんなことには、興味がないのである。

すでに死語となった語をうまく拾うと、
私たちが失ってきたものは何か、が分かることがある。
分からないことも、多いけれど。