夜、仕事先から帰る電車の中で、
珍しい体験をした。

ひどく満員というわけではない。
だが、終電よりいくつか前、という時刻の便は、
実はかなり人が多い。
席は埋まり、立っている人もだいぶいる。

乗り込んだ私は、立つのは覚悟している。
立って読める本を片手に、
ドアに沿うようにして立った。

走り出してから、ちょっと向きを変えようと思った。
すると、体が動かないことに気づいた。
はて? 誰か人と接しているわけではない。
どこかに引っかかったかな?

見ると、
コートが、ドアに挟まれていた。

引っ張ってみたが、外れない。
ちょっと厚手のコートなので、しっかり噛まれている。

仕方がないので、
次の駅でドアが開くのを待った。
幸い、次の駅ではこちら側のドアが開いたので、
このつながれた状態から解放されることができた。

これが、ホーム側から挟まれたら、どうなるか。
大変なことになる。
そういうニュースが流れることがある。
それを思うと、ぞっとした。

他の乗客には、気づかれていたかどうか、分からない。
たぶん、殆ど誰も分からなかったことだろうと思う。
私も、慌てず平然としていたのであるが、
縛られている次の駅まで、少し心細かった。

少なくとも、センサーは
作動していなかったわけだろう。
だからまた、外から挟まれたら、怖いわけである。