家電業界で、価格に斜線が入っているものがなくなりそうだ。
全国家庭電気製品公正取引協議会の中で議論があり、そう決まったという。

つまりは、交渉次第でもっと値下げします、という意味の表示であった。
これが、消費者にとって分かりにくい、というのである。

示した価格よりも高く売るのは、たしかにまずい。
しかし、それより安くしてくれたものを、詐欺呼ばわりはしないものだ。
事実、それを法的に違反しているという認識は、誰もしていない。

交渉次第で値下げします、というのは、
あけすけに価格を表示して、
他店とガチンコ勝負にするようになると、
際限なく安売りして競争しなければならなくなるため、
いわば含みをもたせておく、という旧来の知恵であった。

違法性というよりも、商道徳とでもいうものに関わるようだ。
これでは価格を表示する意味がない、という理屈も、それはそれで筋が通る。

だが、街の肉屋や魚屋、八百屋では、
表示価格外での端切りや値切りは常識である。
あらゆる商取引を、一律に定めることが公平なのかどうか、
私には分からない。

学生なので……と負けてもらったこともあった。
二つの家電製品を一緒に買うと言うと、
喜んで値引きしてくれた店もあった。
配達でなく持ち帰りますから、と言って
端を切ってもらったこともあった。

そこには、人と人とのかけひきもあったし、
情けというものの理解もあった。

現に、車を買うときには、そうではないだろうか。
誰が、表示通りで売らないと「分かりにくい」などと言うのか。
家を買うときにも、
じゃあ電灯をサービスしましょう、などということがあってはならないのか。
パソコンの展示品を買うから、もう少し引いてください、と
願い出ることができなくなってもいいのか。

この家電業界に不平を言っているのは、一部の消費者であるようだ。
その理由の一つが
「店員に尋ねるのが煩わしい」
というものらしい。

ここが問題ではないのか。
価格を決めるのも、全部他人任せ、という考え方。
自己責任で決めるのはいやだ、
全部誰かほかの人が考えて決めてくれ、
そうした精神が、見え見えではないのか。

我が家でも、地デジへの転換もあり、
そろそろダメになってきた家電製品もあり、
そしてあまりに大事に使う電器製品は危険だから避けるように、と
お上が言ってきていることもあり、
いずれ家電製品はちょくちょく買い換えなければならない時がくる。

斜線チラシや表示がなくなっても、
私は店員さんと話をするつもりだ。
表示通りです、などとまけてくれない店は、
きっとほかのサービスでも厳しく線を引いてくるはずだということで、
敬遠することにしよう。

多分、電器店のほうも、
そういうつもりではないかと私は推測しているが……。